投開票も面倒だし非効率極まりない
2021年10月31日に、日本では衆議院総選挙の投開票が行われました。
私も地元でしっかりと選挙に行ってきましたが、会場は長蛇の列ができていて長い時間待たされ、中に入ると多くのスタッフが手作業で資料の確認をしたり、鉛筆と投票用紙を手渡しするなど、昔ながらのアナログな対応が行われていました。時間もかかるわけです。
世の中の多くのものがIT化されて便利になっていく中で、あまりにもアナログな対応が行われる選挙ですが、これにITを活用しようとすると色々な問題が考えられます。
今回は日本で選挙をIT化する際に発生する諸問題について考えてみます。
理由1. 個人情報を過度に守る文化
日本は、個人の情報を非常に大切にする国で、その文化は多くの人に尊重され、他者を守る美徳は海外からも評価が高いようです。
しかし、一方でこの他者を過度に守りすぎる考えがある事によって、情報が無造作に行き交うインターネットなどのIT技術を容易には使用することができません。そこには、厳重なセキュリティーなども必要になり、インフラや機器など整備しなければならないものが非常に多く出てきます。
同様の理由で電子マネーについても普及が遅く、未だ紙幣などを利用して支払いをする文化が根強い国でもあり、それは先進国日本の少し異常な所として世界からは受け止められてさえいるようです。
特に中国では急速に電子マネーは流通し、殆どの人がAlipay(アリペイ)などの決済サービスを利用しているようです。電子マネーは偽造することが出来ず、支払いを受ける店舗側も安心というのも理由の一つのようです。
ですがこの中国の電子マネーには個人情報保護の概念が欠落しており、個人が購入した物品や場所の情報などが政府にすべて通知され、記録されます。この情報を、その人向けのお得な情報や便利な情報などを通知するといった新しいサービスに活用し、一層のIT化が進んでいっているようです。個人の情報をどこまで保護し、誰から守るのかという線引きが、日本とは大きく異なっていることに驚きますが、どちらが正しいのかは一概には言えないでしょう。
日本の選挙がIT化するためには、そういう認識から変わっていかなければならず、実現はなかなか遠い道のりのように思います。
理由2. 日本はIT後進国
日本は経済大国であり先進国で、GDPでもアメリカ・中国に次いで第3位の国で、世界から見てもものすごく発展して裕福な国と言えるでしょう。
しかし、勘違いしてはいけないのが、日本のIT技術は世界の中では高くなく、高めに評価したとしても先進国の中では中の上くらいではないでしょうか。欧州のどこかのシンクタンクによるまとめでもそういった結果が出されていたと記憶しています。
現在中国・アメリカの対立が懸念される中で、中国のその圧倒的なIT技術にアメリカは対抗できないとされていて、サイバー攻撃によってアメリカの軍隊は大きな打撃を受けるだろうと予測されています。アメリカですらその状態なのですが、日本はそのアメリカよりも更に劣っているのです。
つまり、日本が選挙をIT化しようとすると、インフラやセキュリティーなどをしっかり固めなければなりませんが、それは世界的にみると非常に稚拙なものになってしまう可能性が高いのです。どういうことかというと、例えば中国などにそのインフラが侵入されてしまうと、選挙結果を改竄されるなどの被害がでる可能性があるのです。アナログでやってさえいれば、このような事故は起こりません。
つまり、そういった諸外国よりも圧倒的なIT技術が日本に確立されるまでは、選挙のIT化は難しいだろうという状況なのです。
理由3. IT文化を活用しない/できない人への対応
そして第3の理由は、国民全員がITを活用しているわけではないという現状です。
日本は高い人に合わせるのではなく、基本的には低い位置のいる人に合わせて全員の方針を決定する傾向にあります。特に日本全員が参加する選挙の方式については、選挙権のある全ての国民が問題なく選挙に参加できなければなりません。
例えばパソコンもスマホも所持していない高齢者の方も、参加できなければならず、便利だからと安直にIT化するわけにはいかないのです。
ならば高齢者は今まで通りとすればよいのではと思うかもしれませんが、アナログからIT化を進める際に、アナログ・デジタルの「並行稼働」という選択は非常に大きな負担となります。
完全に移行するのと比べて、両方の仕組みを並行稼働させると大幅にコストが増大します。そして何よりも辛いのが、その増大したコストは、完全移行が完了すると、すべて無駄となってしまうということです。そのため、IT化を進める際には、多少のリスクがあったとしても、それを万全に仕上げた上で一発移行してしまった方が、総合的に見て低コストとなる場合が殆どです。
日本では高齢者への配慮などで一括で選挙をIT化することは難しく、結局現状維持のアナログという方式からなかなか脱却できないのです。
まとめ - 民主主義の在り方も進化可能なのでは -
もしもIT化が進んで、家にいながら選挙に簡単に参加できるような時代が来たら、圧倒的に政治の進め方が進歩しそうです。
国民全員の声が簡単に速く集まるのです。
そう考えると、今の民主主義の体制すら進化させることが出来るような気がしてきます。今の民主主義は、代表者を選出してその人たちが実際に政治を執り行うという方式ですが、IT化が進めば国民の意見を代表してもらう必要もなくなりそうです。
そうなってくると、政治の進め方そのものが変革してしまいそうです。
古くは封建制度や絶対王政など、様々な政治方式が行われ、それらからさらに良い方法を考えた結果、現在は民主主義に落ち着いています。しかし、私たちの知っている民主主義は、現時点での最適解ではあるかもしれませんが、それが人類の終着点とは限りません。常によい方法はないかと考えることで、私たちは更なる進化を遂げられるのではないでしょうか。
とはいえ、日本の投票率は低く、IT化したとしてもどれほどの人が政治に関心を持つのかは疑問ではありますが。
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