2021年10月15日金曜日

北朝鮮の金正恩総書記の自衛アピールは信用できるのか

北朝鮮で兵器展覧会 (2021/10/11)


2021年10月12日に、少し興味深いニュースが飛び込んできました。

北朝鮮が2021年10月11日に兵器の展覧会を開催したとのことです。展覧会では大陸間弾道ミサイルなどが展示されたとのことです。北朝鮮の金正恩氏は開幕式で演説をしたそうで、朝鮮半島の不安定さはアメリカが原因であるとしながら、北朝鮮の最大の敵は戦争自体で、韓国やアメリカという特定の国家ではないとしています。

また、外部からの軍事的脅威に対して自衛の手段を持つ必要があると強調しています。

いつもの事ですが、アメリカを中心とした先進諸国の経済制裁や軍事的な威圧を止めて、対等に対話をすることを望むため、軍備強化をしてその力を誇示しているといった状況のように見えます。

北朝鮮の金正恩氏について、少し掘り下げてみることにします。


金正恩という北朝鮮のトップについて


金正恩(キム・ジョンウン)は、現在の北朝鮮のトップで総書記という肩書になっています。2011年の年末に第二代の父親が亡くなることでその権力を引き継いだ形です。

北朝鮮の歴史は浅く、第二次世界大戦後に朝鮮半島を北部と南部に北緯38度線で分割し、それぞれソ連とアメリカがバックアップする形で新しい国家が誕生しました。北側に出来た国が、北朝鮮民主主義人民共和国(通称:北朝鮮)で、英語ではNorth Koreaと呼びます。

北朝鮮の初代トップは金日成(キム・イルソン)で、金正恩の祖父にあたります。北朝鮮は世襲制で、初代金日成の長男である金正日(キム・ジョンイル)が二代目、その三男が金正恩で三代目となります。


二代目の金正日には三人の男子がいたのですが、長男の金正男(キム・ジョンナム)は金正恩に暗殺されたことが知られています。次男の金正哲キム・ジョンチョル)は後継者争いに参加しなかったのか、暗殺もされることなく、現在は金政権内で政治を手伝っているとも見られています。父親の金正日からは女の子みたいと評されていたそうです。

金正恩体制になってからは、軍備強化に力を入れ始め、核開発や大陸間弾道ミサイルなども、今の北朝鮮体制になってからの事です。

北朝鮮のトップについてまとめると、以下のようになります。

初代 金日成 (1948年 - 1994年 : 46年間)
二代 金正日 (1994年 - 2011年 : 17年間)
三代 金正恩 (2011年 - 現在 : 10年間)


核兵器開発や各種兵器開発は自衛のため


金正恩が推し進める軍備強化は、彼の言い分では自衛のためであって、他国に戦争を仕掛けようとしているわけではないとのことです。

しかし、2006年の核実験以降、国連安保理の決議により、世界各国からの経済制裁を受けることになり、これは今も継続中です。日本も経済制裁を行っている国の一つです。北朝鮮の言い分としては、自衛のためであって、外交交渉を対等にするための手段であり、経済制裁は不当だとしています。

これについては意見が分かれるところですが、個人的には核兵器は廃絶した方が良いとは思うものの、核兵器を10000発以上持っているアメリカやロシアがいる以上、核兵器を持たない選択の方が異常とさえ感じます。経済制裁に至っては、自分のことを棚に上げた横暴だとさえ感じます。詳しくは以下を参照ください。


北朝鮮の過去のテロは全て初代 - 金日成時代


北朝鮮は、過去に何度か韓国を標的としたテロ行為を行っています。有名な3件を紹介します。

1. 韓国大統領官邸(青瓦台)襲撃未遂事件 (1968年)
2. ビルマ・ラングーン事件 (1983年)
3. 大韓航空機爆破事件 (1987年)

いずれも韓国の要人や韓国で開催されるオリンピックの妨害を目的として起こされたものです。上述の北朝鮮トップの履歴を見てわかる通り、すべて初代の金日成時代に起こされたものです。金日成は、朝鮮半島の統一を目論み、朝鮮戦争を起こした張本人でもあり、初代ならではの野心に溢れていたとも受け取ることができます。

日本との間には拉致問題も


3.の大韓航空機爆破事件によって日本人の拉致問題が明るみとなり、その後の交渉で、二代の金正日時代に数名の拉致被害者が日本に帰国することができています。全員が帰国できているわけではありませんが、北朝鮮側は全て解決したというスタンスになっています。

横田めぐみさんについては、実のご両親が積極的に訴え続けていることで有名で、新しく誕生した岸田政権にも交渉して解決することを訴えられています。残念ながら父親の横田滋さんはお亡くなりになりました。北朝鮮側も日本政府も、関係者が全員亡くなるその日まで棚上げして解決してしまうという気なのではという憶測もされるほど、本件についての国際的な動きは止まってしまっています。


金正恩がテロ活動へ関与したか


上述の通り、現在の三代目金政権のトップ金正恩氏は、テロ活動には関与していないことになります。全て初代の金日成の手によるものです。朝鮮戦争も同様です。

つまり、国際的な問題を起こしたのは先々代で、権力を持った時から国際的には良く思われていない状態であったことになります。さらに外敵から身を守るために武装を進めたため、国際社会から完全に孤立化していき、現在の貧困国家という結果に繋がっていると見ることもできます。

兄弟(長兄 : 金正男)の殺害へ関与


金正恩の兄にあたる金正男氏がマレーシアのクアラルンプール国際空港で暗殺された事件が起き、この実行犯がすべてを供述したため、金正恩氏の指示によるものという見解が一般的となっていますが、当然ながら北朝鮮側は関与を否定していて真相は分かりません。

実行犯であるベトナム人女性は、暗殺を実行してはいるのですが、比較的長い期間「いたずら番組の撮影」として騙され続けており、その最後のターゲットになったのが金正男氏だったため、殺意はなかったと判断され、3年程度の懲役刑で現在は出所しています。様々なインタビュー動画なども観ることができ、かなり詳しく当時の状況を知ることができる事件となっています。



金正男氏は後継者や政治には興味がなかったそうですが、金正恩が後継者になる事には反対しており、その件を含めて邪魔者を排除する形になったのではとの見方もできます。日本も含め、多くの国を旅する自由人だったようですが、父親である金正日が決定したら従うつもりだったようです。

まとめ - 今の北朝鮮は信用できるのか -


金正男氏の自衛のためという言葉は信じても良いのでしょうか。

確かに過去のテロ事件には関与していなさそうですが、後継者の問題については気になります。また、暗殺されてしまった金正男氏が言うには、2010年に韓国の軍艦である「天安」が沈没した事件を金正男が指示したというのも気になります。この沈没は、北朝鮮の朝鮮人民軍の魚雷攻撃によるものであることが分かっています。

しかし、この韓国の軍艦が沈められた事件に対して、韓国は報復などを行っておらず、現大統領の文在寅(ムン・ジェイン)は遺族からの質問に対して、北朝鮮の手によるものと回答してはいるものの、特に行動は起こしていません。恐らく韓国政府としては触れたくない事件になってしまっているのでしょう。

核開発やミサイル実験などは、先進諸国も行っていることで、そのことで非難するのは筋違いと思ってはいますが、それ以外にとにかく北朝鮮はもう少し情報が開示されなければ、真実も分からず信用するのは難しいでしょう。平壌以外の都市を自由に見て回ることが出来るくらい国内情報をオープンに諸外国へ見えるような体制を築いてほしいものです。

貧しいことがばれて侵攻されることを懸念して不可能なのでしょうが、国民の衣食住を何とかするためには必要なのではと思ってしまうのです。


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