2021年10月18日月曜日

アングロサクソンによる覇権の歴史~米英豪のAUKUS結成を考える

英語の始祖であるアングロサクソン人


日本人は、民族という考え方に疎いと常々思います。

日本人は、日本人同士の繋がりは感じ、同じ日本人同士は助け合おうとします。しかし、日本民族は、日本列島以外には殆ど居住しておらず、逆に日本列島上には日本民族以外は殆ど居住していないため、他の民族というものは理解しずらく、外国人と一括りにしてしまいがちです。

そんな中でも、日本の中で古くから研究されている民族の一つに「アングロサクソン」という人たちがいます。

2021年9月に、イギリス・アメリカ・オーストラリアが新しい安全保障の枠組みであるAUKUSを結成したと発表がありました。これは歴史的にみると、アングロサクソンの連携強化とも捉えられます。


普段の日本人の生活では、アングロサクソンという言葉は聞きなれず、あまり考えることはないかもしれません。ですが、我々が一生懸命勉強する「英語」はアングロサクソン人がルーツの言語です。そんなアングロサクソンという人たちについて、どういう民族なのかも含め、歴史を紐解きながら考えていくことにします。


アングロサクソンの始まりはドイツの地方


409年にローマ帝国が現在のイギリスであるブリタニアを放棄した後、ドイツのアングロ地方と言われるところから、サクソン民族とも言われる複数の民族がブリタニアに移住しました。

彼らはそこで小さな王国を興し、それはやがて統一した大きな王国となり、現代まで続いていきます。もちろんその歴史の中では、他の民族(デーン族など)に支配されることもありました。

アングロ地方のサクソン民族の使う言葉は、現代の英語の基になったとされています。



面白いことに、ドイツの一つの地方が起源で、現在多くの地域で活躍しているアングロサクソン民族ですが、ドイツの中ではそういった考え方は殆どなく、イギリスやアメリカにおいても、あまりそういった意識はないようです。

日の沈まない帝国 - イギリスの帝国主義


アングロサクソン人は、その後目覚ましい発展をしていき、世界で最初に産業革命をおこすことで知られています。16世紀に世界で最も発展した科学力をもったイギリスは、世界の覇権国へと急速に階段を駆け上がっていきます。

アメリカ大陸を発見し、アフリカを回ってインド・オーストラリアへと影響範囲を広め、各地の植民地経営によって凄まじい富を築きます。地球の陸地の半分以上を影響下におき、必ずどこかに太陽の光が当たることから、日の沈まない帝国とまで呼ばれるほどとなりました。


イギリスは二回の世界大戦を経て、国力は大幅に低下することとなり、残念ながら世界の覇権国の座をアメリカに奪われる形となりましたが、イギリスは未だヨーロッパや世界に絶大な影響力のある先進国として、日本でも知らない人はいない程有名な国です。

言うまでもない事ですが、イギリスの次に世界覇権国と言われるまでに成長したアメリカも、元を辿ればアングロサクソン系民族です。

アメリカ・インド・オーストラリアなどに影響範囲を広げる


アメリカ大陸のアメリカ・カナダ、そしてアフリカを回ってインド・オーストラリアには、帝国主義時代のイギリスの影響が非常に強く残っています。

特に、インド以外の諸国では、アングロサクソンの言語である英語が公用語となっていて、歴史上の強い結びつきを今も感じることができます。


インドでは、後の独立の経緯で残念ながらインド・パキスタン・バングラデシュの3国に分かれることとなってしまい、その原因はイギリスの宗教対立を煽った政策に原因があるとする見方もあります。インドは英語圏になることもなく、彼ら独自の国家として独立していることは、非常に素晴らしいこととも考えられます。

アメリカは、1775年のジョージ・ワシントンの独立戦争を経て、イギリスから独立しました。ご存じの通り、アメリカ合衆国やカナダの公用語は英語です。

アングロサクソンの特徴は英語とキリスト教


アングロサクソン諸国の特徴で、分かりやすいのは公用語が英語である事と、宗教がキリスト教である事ではないでしょうか。

イギリス・アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドといったアングロサクソン民族の影響を残した白人社会では、英語が話され、キリスト教を信じている人たちが多いと分析することが出来ます。


外見的特徴としては、背が高く、色白で、青い目にブロンドの髪という、日本人の想像する外国人の典型ではないでしょうか。イギリスやヨーロッパ諸国に多いそうですが、歴史上多くの民族が複雑に入り乱れ、現代では純粋なアングロサクソン人というのは少ないとされているようです。

イギリス・アメリカという歴代世界覇権国は、現代社会に非常に大きな影響を与えています。

世界の共通語として各地で習得が進められる英語はもちろんの事、世界最大の信者数を抱える宗教はキリスト教です。つまり、人類全体の言語や宗教に基づく倫理観などは、アングロサクソンの人たちが築いてきた文明の上に成り立っていると言っても過言ではないのかもしれません。

日本はというと、イギリスからユーラシア大陸で逆の位置にあり、非常に稀有な近代化を果たした国と捉えることもできるでしょう。これには、島国という地の利も少なからず影響していると考えられます。

日本とイギリスが発展した経緯については、「地政学」という日本では禁止されている学問から考えると、かなりすっきりします。「地政学」については以下の記事で触れたことがありますので、興味がある方はご覧ください。


現代のアングロサクソン諸国という考え方は日本固有


冒頭のアングロサクソンのルーツの部分でも少し触れましたが、実はこのアングロサクソンという民族の括りについては、日本では一般的に研究され、今もその考え方をしますが、現地の人たちはあまりそういう認識はないそうです。

歴史を鑑みると、イギリスに渡った人たちが、結果として産業革命から近代社会の基礎を先行して築き上げ、それを世界に広げた形になっていて、非常に広くアングロサクソンの人たちの文化や考え方が広まった世界になっています。

アメリカでは、アメリカの民主的で自由な経済社会が絶対に正しいので、それを世界に広めようという考え方が、少なからずあるようではありますが、アングロサクソンのルーツの国同士が協力して何かを成そうというような考え方はないようです。


これは日本人に置き換えて考えると、少し不思議な感じもします。

日本人が世界中に広がって、同じようにそれぞれ別の国を興していたとしましょう。彼らは同じ日本語を話し、同じような経済体系で国を運営しているのであれば、大いに協力していこうという気持ちになる気がします。

そういう意味では、アングロサクソンというのは、日本民族の様な認識のものではなく、歴史上のもっと古い民族的なルーツくらいの認識なのかもしれません。

アングロサクソン諸国の連合 - AUKUSとFive Eyes


2021年の9月に、オーストラリアがイギリス・アメリカと安全保障上の連携を強める「AUKUS(オーカス)」を結成したニュースが飛び込んできました。


このアメリカの突然の発表には、フランスが激怒したと様々な世界外交に詳しい方々が分析しているのを目にしました。元々オーストラリアには、フランスと潜水艦を共同開発する予定だったとかで、代わりにアメリカの原子力潜水艦を導入することになってしまい、フランスとの予定は白紙になったというのです。こういったバイデン大統領の動きは、トランプ大統領の再来(自分勝手な外交)とまで言われているようです。

このAUKUSは、Australia(A)、United Kingdom(UK)、United States(US)の頭文字を取って名付けられたそうです。このAUKUSは、言うまでもなくアングロサクソン起源の国々で構成されています。

そして、この3か国にカナダとニュージーランドを加えた諜報同盟として、Five Eyesと言われる国際機関があります。これについても、AUKUSと同じくアングロサクソン諸国による連携協定です。

狙いは中国を含めた南太平洋周辺の治安維持等で、アングロサクソンだから協力しているという訳ではないようですが、日本人からすると、同じ英語圏でキリスト教圏のアングロサクソンが、いよいよ連携を強めて一体化戦略を始めているとも見えます。

まとめ - 民族に疎い日本人だが -


今回は、ドイツに起源を持ってイギリス、そしてアメリカと世界を牽引してきたアングロサクソンについて改めて確認し、考えてみました。

日本人は民族という概念に無頓着で、あまり意識することはない気がしますが、今回のAUKUSなどの連携を見ていると、やはり同じルーツをもった人たちは連携が取りやすそうだと感じます。特に言語の壁がなく、同じ宗教を信じていて、国の経済体制も殆ど同じという先進諸国同士であれば、価値観の共有も容易でしょう。

残念なことに、日本語が公用語で、日本の様な宗教観を持った他国は私の知る限りありません。


通訳などを介して言語の壁は、ある程度乗り越えていくことが可能でしょう。ですが、宗教や彼らの倫理観については、日本人はもっと勉強しなければならないように感じます。政治体制や科学技術については、可能な限り取り入れて発展を遂げてきた日本ではありますが、宗教について日本人はあまり興味を持ちません。しかし、宗教は神様の定義と共に、人々がどのように現代社会で生きていくのかという「倫理」や「道徳」も説いていて、アングロサクソンを含め世界中の多くの人が、そういった価値観で物事を考えているのです。

中国を中心に緊張が高まる国際情勢に対して、日本はもっと諸外国と連携を強め、私たちの日本はもちろんの事、同じ価値観を共有できる仲間と共に幸せな未来を構築していくため、もっと諸外国のことを勉強しなければならないと強く思います。

キリスト教については、私もまだまだ勉強不足ですが、Amazon Primeで観ることができる「イエス・キリストの生涯」というドラマでは、キリスト教のお話を紐解きながら、神秘的な伝説を科学的に考えてみるなど、面白い試みが含まれていて、日本人にも理解しやすいと思います。

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