白鯨に注意しろという警告がある
「白鯨に注意しなさい」という言葉を聞くことがありますが、普通に聞くと伏兵の様なものに気を付けるのかなと思ってしまいそうです。しかし、これは「復讐に走ることで自身も破滅してしまうという」という意味の警告です。
実は結構文学的で、かなり知的な表現です。
こういう使われ方だけでなく、日本では様々な所で「白鯨」という名前が使われます。白鯨という文字から分かる通り、これは白いクジラのことを表しています。今回は、白い鯨(White Whale)の使われている例を見ながら、この復讐に対する警告の起源となったものについて踏み込んで考えていってみましょう。
「白鯨」というとリゼロが印象的
日本のライトノベルの「Re:ゼロから始める異世界生活」という作品が2016年にアニメ化され放映されました。日本内で多くの人がファンとなり、アニメも2期が制作され、ゲームなどにも展開をしています。
この作品の中にも、「白鯨」と呼ばれる巨大なクジラの化け物が登場します。
驚くような巨大さと、犠牲にした人のことを他の人が忘れてしまうという特性を持ち、非常に恐ろしい存在として描かれており、主人公とその仲間たちが白鯨と戦うシーンは観る人を惹きつけ、凄まじい達成感を共に感じることが出来る印象的なシーンでした。
リゼロ内での設定上は、暴食の魔女ダフネの創造した3種類の魔獣の一つで、白鯨は人々を飢餓から救うために生みだされたとなっています。実際には白鯨が人を襲い喰らうのですが、それについてダフネは弱肉強食であるとしています。
私自身もこの世界観も、この戦闘に至るまでの葛藤や苦難の描き方、そしてもちろん戦闘シーンもその後についても、全体通して白鯨戦はリゼロの中でも大好きなストーリーです。
後述しますが、白鯨というのは「人々が太刀打ちできない強大な化け物」という意味もあるのです。
最新鋭潜水艦「はくげい」が進水式 2021年10月14日
今度はリアルな日本のお話です。
今年2021年の10月に、海上自衛隊の最新鋭の潜水艦が進水式を行ったことがニュースとなりました。この潜水艦の名前は「はくげい」となっています。
「はくげい」は全長84メートル、排水量は約3000トンとなっていて、国内最大級の潜水艦となっています。動力は原子力ではなくリチウムイオン電池ですが、非常に長い時間水中が航行できるとのことです。
まだ内装などの作業が完了しておらず、最終的には2023年3月に海上自衛隊に引き渡しが行われる予定となっています。
海上自衛隊の船は、海の自然現象や海洋生物の名前を付ける風習があり、今回はマッコウクジラを意味する「はくげい」が選ばれたとされています。
海外ドラマ「ラストシップ」で上官への警告として
2021年10月現在、Amazon Primeで観ることができる「ラストシップ」という海外ドラマを少し紹介しておきます。
このドラマは、今の世界の状況に似たような、「パンデミック」に世界が病んでいる中で、隔離されたアメリカ軍艦の中でワクチンを開発し、それを世界に広めていく過程での、様々な問題や対抗組織との戦闘などをリアルに表現した人間ドラマです。
このドラマの中で、完成したワクチンを大量生産する段階に入って、反乱分子に研究所(ラボ)が破壊されるという事件が起こります。その反乱分子への復讐に燃える艦長に対して、専任軍曹から「白鯨にご注意を」という表現が登場します。
この言葉、日本人にはピンと来ないかもしれませんが、「復讐に囚われることの危険性」を暗示しており、そうならないように注意深く進めなければと諫めているのです。
艦長の怒りも分かりますし、専任軍曹の冷静な考えについても、そして恐れず諫めるその心にも深く考えさせられるものがあります。
「ラストシップ」はコロナ禍の今こそ見るべき名作ドラマ
少し話は逸れますが、このドラマは非常にオススメできます。
複数シーズンにわたって比較的長いドラマではありますが、見る人を惹きつけ、飽きさせません。第3シーズンでは日本もスポットが当たり、日本人の俳優である真田広之氏が重要な役で登場します。控えめに言ってもカッコ良すぎです。
現在の新型コロナウイルスによるパンデミックに、人々が対抗している世界に共通するものもあり、非常に共感できる部分や考えさせられる部分もあります。
ドラマの中は、新型コロナウイルスとは比較にならない致死性の高いウイルスが非常に速い速度で蔓延し、世界の半数は死に絶えた様な世界ですが、生き残った人や自然免疫のある人など、多くの人が登場し、ウイルスよりも怖い「人の一面」などが巧妙に描かれています。
ヒューマンドラマとしても面白いですが、潜水艦との戦闘など、アクションシーンも非常に見ごたえがあります。是非一度観てみてください。
白鯨の起源はアメリカの小説 - ハーマン・メルヴィル
さて、冒頭でも述べましたが、白鯨というのは復讐と深いつながりがある生物とされています。これには、アメリカの小説「白鯨(White Whale)」が影響しています。
「白鯨」という小説は、ハーマン・メルヴィル氏の作品で、今日までに多くの映像作品などにもなっています。タイトルは非常に有名なのですが、内容としては脱線も多く長いため、実際に読んでいる人は少ないのではないかと思われます。
この作品では、一人の男が苦い思い出のある白鯨(マッコウクジラ)への復讐を中心に話が進むのですが、恐ろしいことに、その復讐心に徐々に周りの船乗りたちが同調し始め、一つの勢力の様な形で白鯨に挑むことになるといったストーリー展開です。
これには、狂信的なカルト宗教の様なものを感じます。
そして、その白鯨に立ち向かった狂信的な集団は、一人を除き全員が返り討ちにあい、全滅してしまうという結末を迎えます。
この小説は、復讐に囚われて状況が正確に判断できなくなり、多くの人を巻き込んだ挙句に最悪の結果となることがあると、人々へ警告しているようにも思えます。
まとめ - 白鯨とは強大で恐ろしい存在 -
復讐しようとする人々の思いを踏みつぶす強大な白鯨は、人々が束になっても勝利することができない存在として小説で描かれました。
そのため、リゼロの化け物や潜水艦の名前など、強力で強大な強いものというイメージになっているものと思われます。
ですが、その白鯨の周辺のストーリーについては、今回紹介したような復讐に関する悲劇があるのです。この雑学を知っておくと、今後白鯨に関するものを見かけた時に、ちょっと変わった受け止め方ができるように思います。
また、親しい人が我を忘れて復讐に燃えている時などは、是非「白鯨に気を付けて」と警告してあげてください。感情を逆撫でして怒りを買うことになっても私のせいにはしないでください…。約束です。
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