2021年8月30日月曜日

鄧小平の棚上げ戦略の凄さ

event_note8月 30, 2021 editBy Fluffy Knowledge forumNo comments

 鄧小平の棚上げ戦略の凄さ

お隣の国中国は、日本の歴史において避けては通れない、非常に大きな影響を与えてきた国です。古くは仏教や各種文化のお手本として、そして近代・現代では帝国主義による国土を巡った争いなど、切っても切れない関係性があります。

2021年現在は、中国は中国共産党による(国際的に見て)独裁的といえる政権のもとで、自由な経済活動が行われ、目覚ましい発展を遂げていっており、アメリカに続いて世界第2位のGDPをもつ経済大国です。人口も13億人以上抱えており、国土内の資源も豊富で、アメリカと世界の覇権を巡っての水面下の攻防が続いています。

日本国内や、資本主義の各国からは、その国策の進め方が武力による威嚇や、資本力による経済的に不平等な条約、提携などと共に、宗教や人権的な問題については批判的な意見が多いのも事実です。

個人的には、旧ソ連のような「情報の不透明さ」が感じられ、それが元になって批判につながっているようにも思います。やましいことがないなら、世界の皆が安心できるように色々情報を開示してほしいものです。ですが、彼らの経済的な発展は、本当に素晴らしいと思っていますし、現在の国家主席「習近平」氏のリーダーシップは心の底から賞賛しています。

細かな人権問題などについては、基本的には批判したいところではありますが、何よりも「国家として進むべき道を示している」というところが評価の中心にあります。

中国の歴史的なリーダー3名


中国(中華人民共和国)の歴史の中では、様々な優秀なリーダーがいたわけですが、その中でも私は特に3人の人が重要だと思っています。

  1. 毛沢東 (モウ タクトウ)
  2. 鄧小平 (トウ ショウヘイ)
  3. 習近平 (シュウ キンペイ)
習近平については、冒頭で少し触れましたので、ここでは深く触れないことにします。
毛沢東については、あまり述べる必要もないような気もしますが、個人的にはざっくり「すごい人」と思っています。残念ながら政策については失敗が多く、多くの国難を招く結果になってしまったのは事実です。ですが、もちろん結果がついてくることは重要ですが、一つの信念に基づいて「革命」という大事を成し遂げ、新しい国家を生み出したのです。これほど強力なリーダーは、現代ではなかなかお目にかかれません。そういう意味での評価です。

そして今回取り上げる「鄧小平」という人です。




彼はこの三人の中で、唯一「国家主席」という中国共産党における最上位の役についていません。これはとても面白いですね。当時の他国の代表は、彼の役職名をどのように呼べば良いのか困ったそうで、最終的には「最高実力者」と呼称したそうです。

一般的な棚上げとは


ついつい中国の話を書き始めると、素晴らしいリーダーについて語りたくなってしまいますが、今回のテーマは「鄧小平の棚上げ戦略」についてです。

「棚上げ」というと、現代のビジネスシーンでも様々使われる戦略の一つですよね。

ざっくりいうと、問題となっているものについて検討したり議論したりすることを一度やめる、後回しすることです。

私がビジネスシーンで動いている体験場の話になってしまいますが、「棚上げ」したものが後で必ず検討・解決されるとは限りません。棚上げされた問題は、後になっても棚上げされたままで、いつしか忘れ去られることも少なくありません。

そういう意味では、よい戦略ではないようにも見えますが、解釈としては「限られた時間の中で、優先順位の高いものを解決する」という方策と言えるでしょう。

鄧小平の成果


絶対に解決しなければならない大きな問題がある場合、それを解決するために小さな問題、後回しにすることが可能なものについて「一切の議論を行わない」という決断は、勇気も必要ですし、理解を得ることも難しいでしょう。

国際的な問題については尚更です。

ですが、鄧小平という人物はこの方策を上手く使い、様々な問題を次のステージへ進めることに成功し、結果中国という国を経済大国へ成り上がるレールへ乗せることとなりました。知らない人もいるかもしれないので簡単に記載しておきますが、毛沢東時代は「共産主義」を国の経済活動にまで適用しようとしましたが失敗し、鄧小平は経済は資本主義、政治は共産主義(共産党)と住み分けを行なったわけです。これにより停滞していた経済活動が凄まじく活性化したわけです。

棚上げによって為された日中国交回復と尖閣問題


「棚上げ」戦略の中でも有名な成果として「日中国交正常化(日中共同声明)」が挙げられます。

日本は田中角栄内閣時代で、これは世界的に見ても大きな出来事だったのではないでしょうか。日中戦争・第二次世界大戦と日本と中国の関係性が悪化した歴史を経て、それらを乗り越えて再び手を取り合うことに漕ぎ着けられたことには、両国の代表には本当に頭が下がります。

実はこの日中の国交が正常化した時点で、日本と中国には尖閣諸島の領土問題がありました。あまりこの尖閣諸島については深く触れません。触れ始めると必ず長くなるので。

問題は、田中内閣と中国の代表団が会見前に会話をした際、日本側が尖閣諸島の話を振ると、鄧小平は「それらの問題がはありますが...」と言及を避けたと言われています。つまり、諸問題はあるものの、今は「日中国交正常化が最優先、それ以外は棚上げ」と考えていたわけです。

未来の人類の発展を確信する思考


鄧小平の凄いところは、もちろん最大の問題を進めたその手腕でもあるわけですが、私個人はその「棚上げ」の裏にある思考回路もそれ以上に尊敬できる点です。

彼は日中共同声明の会見の前日に以下のような内容を語ったとされています。

「今の我々には解決できなくても、きっと将来もっと良い知恵が生まれ、この問題は解決されるだろう」

正確な発言内容でなくて恐縮ですが、大筋はこんな感じです。
要は、将来人間社会が発展し、新しい科学技術や思想が発展すると、現在は解決が難しい問題でも解決ができるようになるだろうとしているのです。

この話を聞いた時、私は「はっ」としました。何故なら、現代抱える問題点について、現代人である我々は躍起になって知恵を絞ってその問題を解決することに執着します。問題についての取り組み方で、こんな方法があるのか、と驚愕・感嘆したのです。

我々が直面する諸問題への方針


この鄧小平の問題への取り組み姿勢を知ってから、様々な現代の問題に対する取り組みが本当に正しいのだろうかと疑問に思ったり、一歩引いて考えることも大事なのではないかと思うようになりました。

考えたり対策を講じる「リソースは有限」なのです。

場合によっては、すぐに解決に乗り出すのではなく、正しく優先順位を決めて、順序良く取り組みしていくべきでしょう。ただ、この優先順位を決めるのは、国際的な問題など大きなものは決めること自体が大変な困難を伴うと予想されます。「人権問題」「領土問題」のどちらを優先しますか、と問われても苦笑するしかありません。

こればかりは、優秀な「リーダー」が方針を決めるしかないでしょう。反対意見もあるでしょう。ですが、誰かがそれを決めて進めなければ、どの分野も進まないのではないでしょうか。

まとめ


今回は鄧小平という素晴らしい中国のリーダーと、彼の「棚上げ」戦略による成果、その戦略の根底にある思考について取り上げてみました。

私は歴史学者ではありませんので、部分的に切り取った小さな事柄から、我々の普段の考え方などに役立つ情報を記事にしています。歴史的には様々な議論が行われていることも承知していますが、それこそここでは取り上げません。

私もSE時代に大人数のプロジェクトを如何に効率良く運用していくかと工夫し、苦心していたわけですが、こういった先人の素晴らしい発想は、当時知っていれば取れる戦略も多かったのではないかと思うばかりです。

まだまだ世界の歴史には、素晴らしい考えを持った人たちも多く、学べるところも沢山あります。鉄血宰相「ビスマルク」の有名な一言を最後に。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ


現場で経験した事が多くなれば、大変頼れる存在となれる事は確かです。しかし人間の人生の時間は限られています。歴史から先人の対処法などを学ぶ事で、大幅にそれらを短縮することができ、その方が圧倒的に優れている(賢い)と言っているわけです。現役で働いているときは、目の前が大変でその余裕はないかもしれませんが、是非考えていきたいですね。

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