2021年9月3日金曜日

「政治議論は飲み会ではタブー」が戦争を呼ぶ懸念

event_note9月 03, 2021 editBy Fluffy Knowledge forumNo comments

 政治議論がタブーの日本は危険か


日本の一般常識というかマナーとして、「飲み会の席では宗教・政治の話題は厳禁」といった風習があります。

私も小さなころから、話題がヒートアップして空気が悪くなるし、絶対にそういう場では宗教・政治といった話題をしないように教わった記憶があります。小さいときに教わったと思いますが、大人の世界での暗黙の了解・ルールなのだろうと理解した気がします。


今回は、そんな政治議論が色々タブー視される日本と、活発な議論が行われているドイツの国民性について受けたカルチャーショックについて、記事にしたいと思っています。


日本のタブーとされる政治の話題


日本のそういったタブー視する環境もあり、政治については興味がある人が自分で勉強し、考えをまとめて参加する、または同じく政治に興味があるもの同士が討論をしたりする、といった限定的なものとなっているように感じます。

私自身も、誰が政権を握ってもそんなに日本社会が変化するわけでもないし、まぁいいかくらいに思って過ごしてきた気がします。せっかく権利がある選挙に参加しなかったことも多々あります。日々の生活・仕事が忙しすぎて、政治の話題まで集めて考えるという余裕がなかった、そんな時間があれば貴重な自由な時間は好きなことをしていたかったというのが大きな要因と、今振り返ってみれば、そう分析できる気がします。


飲み会などは、会社内や取引先と頻繁にありましたが、冒頭の暗黙のルールによって、その場では殆ど政治の話題は行われず、政治方面の情報に疎くても、そういう場で困ることは殆どありませんでした。自分の業種に関係した特殊な法案が成立した時や、関連企業でのニュースなどが職場で話題に上るくらいです。

ナチス誕生は至上最高の民主主義から


歴史について学んでいく過程で、人類史上最大の戦争でもある第二次世界大戦については、学ぶべきことが本当に多くあります。いくら学び続けても、各国の情勢や思想など、またそれぞれの過去の歴史なども関連しており、学ぶべきことがなくなる気配はありません。

そんな中で、非常に興味を持ったことがあります。


それが、有名なドイツの「ナチス」と言われるヒトラー政権の発足が、「民主主義の上で行われた点」についてです。つまり、ドイツ国民自身が、ナチスの独裁を押し上げ、その後の世界的な大戦に導いていったということです。

先に断っておきますが、ドイツの歴史的な失敗を攻めようとかそういう意図でこの記事を書いているのではありません。

どうやら私は、「民主主義」があるから国は戦争に向かったりしない、と勝手に思い込んでいたようで、純粋に驚き、そして次に何故そうなっていったのかを調べたくなったのです。

ワイマール憲法から全権委任法可決まで


ドイツは第一次世界大戦で敗戦国となり、多額の賠償金などを支払わなければならなくなりました。それと共に、国の憲法も改めることとなり、ワイマールという都市で策定が行われたため「ワイマール憲法」という民主的な憲法が出来上がりました。

この「ワイマール憲法」というのは、当時最も民主的な憲法だったと言われていたそうです。


この憲法の上で、アメリカの支援を受けつつドイツは戦後の復興を行っていたわけですが、世界恐慌に見舞われ、ドイツ経済は酷い状態となりました。多額の賠償金の支払いに加え、アメリカからの融資が止まり、そしてベルサイユ条約にて制限された軍隊の人数制限も相まって、ドイツ国内の失業率は40%にも上ったとのことです。正直どんな世の中なのか想像もできません。

そして、ヒトラーが台頭してくるわけですが、なんと国際的な条約であるベルサイユ条約を破棄して、軍人を増やし、失業率を回復するという方針を打ち出し、結果議席の過半数以上を獲得して圧倒的な勝利を得ます。国民も「他国との約束を反故にしてでも、我々の生活を何とかしなければ」となったということですね。

そして、法律の制定の権利も議会から政府に移動する「全権委任法」を可決したことで、議会は存在意義を失い、民主政権から一党独裁の政権へと変貌するわけです。この過程は、完全に「民主的な手続きで独裁化を果たした」と言えるでしょう。

ドイツでは盛んな政治議論


そんな中で、非常に興味深いテーマを扱った動画と出会いました。


ドイツでは、実際にどのような歴史教育がされているのか、というテーマで日本人がドイツ人に対して実際のところを質問する内容となっています。


この動画の中で、ドイツでは高校2年生の時に、1年かけて戦争について学ぶのだと語られています。歴史ではなく、「戦争」というテーマで1年かけて学ぶ授業は、日本ではちょっと考えられません。私自身も、歴史の授業の中で戦争についても学びましたし、平和教育という名目で戦争体験者のお話を聞いたりする特別授業があったりなどはありましたが、1年かけて戦争をずっと学ぶようなことはありませんでした。

この事や、その後のお話も非常に興味深い歴史観を知ることが出来ましたが、それ以上に驚いたことは、「ドイツ人はパーティーに行っても、飲みながら政治の話をする」ということです。冒頭で述べた通り、日本人は一種のタブーと考える行動の一つで、日本でそんな行動をとると「非常識だ」「空気を読めない奴」と言われるでしょう。

上記動画で、ドイツ人が政治の話をすることについて、さらに次のように語っていきます。

学校や家などで、「議論をするように」という教育をされ、家でもそういう話題(政治について)をよくするのだというのです。日本に来られた際には、日本人が政治についての議論を全くしないことについてびっくりしたそうです。

民主主義の危険性を理解するドイツ


ドイツでは、「議論をしなければ」政治家の人がどういう考えを持っているのか分からないので「危ない」と学校で教わるそうなのです。

これには、目から鱗です。

日本人は、政治の話はタブー扱いされる場があるくらいなのに、ドイツ人は逆に「どんどん議論して、正しい政治家を選ぶために努力しよう」と教育の段階から教え込まれ、それが普通のこととして成り立っているのです。

そうしなければ、例え民主的な政治であっても、道を誤ることがあるという事を、彼らは身をもって体験し、その反省から「二度と戦争への道を辿らない」対策として実践しているのです。「ヒトラー」のような危険な人間を選ばないようにするため、「投票」しなければならない、と私よりも若いドイツ人の彼が言うのです。感服しました。

政治無関心な日本の危険性


少し前のデータですが、2017年の日本とドイツの投票率の数字が見つかりましたのでここで紹介しておきます。

  • 日本 : 53%
  • ドイツ : 76%
大きな開きがありますね。日本が半分なのに対して、ドイツは3/4以上の人が投票しているという状況のようで、上記のインタビューの内容と合致します。

日本も戦時中には、政党政治から軍閥政治へと民主的に遷移していったはずなので、政治的な状況としては同じような気もしますが、私の感覚としてもこれはドイツのそれとは異なっているように感じます。恐らく、軍事政権となるのが先か、戦争が起こるのが先かという点で大きく異なっているためでしょうか。

日本はすでに軍部の暴走から満州事変~日中戦争と戦争状態に突入しており、その状態から軍部主導の政治へと移行したため、民主主義が問題というよりも、当時の軍部の暴走が問題とされ、軍の解体~自衛隊という組織変更が対策としてとられているように感じます。

逆にドイツの場合は、先に政変が起こって、そこから戦争へ突入していったため、主に教育面の方針転換が対策としてとられているように思います。

この戦後の対策の取られ方の違いで、日本とドイツの思考の差が生まれているように感じ、どちらが良いというわけではなく、どちらも必要なのではないかと感じるわけです。

まとめ


つまりこの記事で何を考えたと記録しておきたかったのかというと、日本は軍部による暴走はもう起こらない状態にしっかりとなっているでしょう。満州事変~日中戦争のような流れで戦争状態へ突入することは皆無なのではないかという安心感があります。

しかし、ドイツのような経過で戦争状態へ突入する可能性は、日本人は考えているでしょうか?

民主的な政治を行っているのだから大丈夫だろう。

少なくとも私は上記のように甘く考えていました。ドイツがワイマール憲法という戦後作られた民主的な憲法の中で独裁制への移行~戦争となった歴史を正しく認識していなかったからです。

我々の憲法はどういった憲法でしたっけ。そう、日本国憲法もまた戦後作られた民主的な憲法ではないですか。つまり、この体制だけではナチスドイツが犯した失敗を防ぐことはできないのです。体制として防ぐ良い方法は直ぐに思いつきませんが、最低でもドイツの人たちが行っているように、今後は政治にもしっかりと興味を持っていき、正しい指導者を選ぶために選挙もしっかり参加しようと考えるに至りました。

どうか今まで政治に興味のなかったような方も、是非平和な世の中を守るためにも、我々自身のためにも、しっかりと興味をもって参加していきましょう。


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