2021年9月16日木曜日

硫黄島 - 隆起拡大を続ける激戦地~沈没船が陸上に

硫黄島 - 隆起拡大を続ける激戦地


今回は硫黄島についての記事です。

硫黄島(いおうとう)については、特に太平洋戦争(大東亜戦争)の戦地として非常に有名ですが、実はこの島はどんどん大きくなっていることをご存じでしょうか。

硫黄島周辺では、海底プレートだったり火山活動だったり、様々な要因で土地が増えたり減ったりしています。火山の噴火で出来たと思った島が、また海に還ったり、ジワジワと隆起して陸地面積が増えたりしているのです。

そんな硫黄島について、歴史や周辺の状況、EEZについても考えてみます。

(2021/10/21 追記)

2021/10/17のニュースで、硫黄島の隆起によって、沈没していた船が陸にむき出しになっていると報道されました。この映像は、多くの人に衝撃を与えたのではないでしょうか。私自身も、第二次世界大戦当時から、沈没船の沈んだ海底が陸になるほど速いスピードで隆起している現実を目の当たりにすると、驚きのあまり記事を追記したくなってしまいました。

ニュースの動画についても以下に置いておきます。興味のある方はどうぞ。動画では福徳岡ノ場や西之島など、小笠原諸島の硫黄島周辺の島についても触れられています。



硫黄島は小笠原諸島の島


硫黄島(いおうとう)は、小笠原諸島の島の一つです。本州からは約1200kmほど離れていますが、ここも東京都に含まれます。


元々は海底火山の影響で出来た地形で、海底からだと、2000m級の山のような形で、その直径は40kmにも及びます。山頂部は大きなカルデラを形成していて、その大半は水の中ですが、一部岩礁のような形で顔を出しているものもあります。

硫黄島にある標高170mの摺鉢山は、側火山(そっかざん)と言われるものです。側火山は、メインの噴火口ではなく、火山の中腹から噴火した際にできる小さな火山の事です。

この火山は、明治時代頃から噴火活動が記録されていて、執筆時点直近では2013年にも水蒸気爆発と思われる火山活動が確認されています。

詳しい情報をご覧になりたい方は、小笠原村のホームページが上に掲載したような美しい写真も多くお勧めです。



島の名前は「いおうじま」ではない


ちょっと面白いお話として、現在「硫黄島」は「いおうとう」と呼ぶことになっています。これは元々そういう名前だったかららしいですが、実は2007年までは「いおうじま」と呼ばれていました。


明治時代頃から、大日本帝国「陸軍」は島民と同じ「いおうとう」と呼んでいたらしいですが、大日本帝国「海軍」の一部で「いおうじま」とされていたらしいです。終戦後GHQがまさかの「いおうじま(Iwo Jima)」採用。そして報道でも「いおうじま」が使われるようになりました。

ですが、島民から「いおうとう」だから!と要望があり、2007年に正式に「いおうとう」に統一する運びになったそうです。現在は公的な国土地理院、海上保安庁共に「いおうとう」に変更されています。

太平洋戦争時の激戦地として知られる


1945年(昭和20年)の2月から3月にかけて、日本とアメリカによる激しい戦闘が行われました。この「硫黄島の戦い」では、日本軍では2万人が以上が戦死し、アメリカ軍は3万人近い戦死傷者がでています。

硫黄島には元々集落があり、人が住んでいましたが、戦争激化に伴い避難していました。敗戦後、GHQに統括管理された後、無事日本に返還されました。しかし、日本に復帰した後の硫黄島は自衛隊の基地となっており、島民は元の集落へ帰ることができていないという問題もあります。


自衛隊としても、後述する隆起の問題などで港を作ることが出来ず、大きな船は硫黄島には寄港できません。

現在は硫黄島に勤務する自衛隊員以外では、飛行場整備の作業員や、遺骨帰還事業の厚生労働省職員などしか立ち入ることを許可されていません。島の近くに船の残骸が残っており、内部には大量の不発弾があると推定されるものの回収が困難な状況で、現在でもまだ危険な区域が残っている状態のようです。

クリント・イーストウッドの映画も有名


硫黄島を題材にした映画は色々ありますが、特に我々の世代ではクリント・イーストウッドの映画が有名なのではないでしょうか。

アメリカ側の視点と、日本側の視点からで2本の映画となって公開されたので、公開された2006年当時も非常に注目されましたが、どちらも非常に評判がよく、今もAmazon Primeなどで観る人も多いのではないでしょうか。戦史としての再現度や、戦争の中での人々の心の表現などが本当に素晴らしい映画だと感じます。

アメリカ側視点 : 「父親たちの星条旗」
日本側視点 : 「硫黄島からの手紙」


私自身は、特に「硫黄島からの手紙」が好きです。たぶん人生で3回は観ていると思います。こういう記事を書いているとまた観たくなるのが困ったものですが。

ストーリーとしては「栗林中将」の手紙を基にした物語ですが、初めて観たときは、嵐の二宮さんが凄く良いお芝居をされることに驚いたものです。文句を言いながら防衛準備をする兵士、戦闘が始まっての混乱、劣勢時の狂気と絶望などが生々しく描かれていて、心が締め付けられるような思いで一杯になります。

実は隆起して拡がっている


さて、この硫黄島ですが、隆起して徐々に大きくなっているのです。徐々にと書きましたが、この大きくなり方が過激で、元々の島部分が何処か分からなくなるくらいに巨大化しているのです。

隆起速度は、年間15cmから20cmとされているようです。

元々複数の島があった硫黄島ですが、今は1200m離れたところにあった島も合体して一つの硫黄島になるほど海が隆起しているのです。

拡大を続けたおかげで、2014年には最大だった父島を抜き去り、晴れて小笠原諸島最大の島となりました。一説によると、付近の海は浅いところが多いらしく、今後も隆起が続けば倍くらいの大きさの島になる可能性もあるそうです。

この件について非常に分かりやすくまとめられた動画がYoutubeにありましたので、ここで紹介しておきます。明るいニュースを届けようという、非常に高い志を持たれた方のチャンネルのようで、とても好感が持てます。このような分かりやすいコンテンツ作成者の方には本当に感謝しかありません。



排他的経済水域(EEZ)の話


ちょっと話は逸れますが、最近もニュースでよく聞くEEZ = 排他的経済水域についてもホンの少し触れておきましょう。

排他的経済水域とは、英語でExclusive Economic Zoneなので、その頭文字をとってEEZと言われることがあります。報道などでは「排他的経済水域」は長すぎて扱うのが難しいなど、きっと色々な事情があるのでしょう。


さて、この排他的経済水域は、分かりやすく言うと「土地から一定範囲の海は自分専用の経済エリア」とするものです。いわゆる「領海」というと、他国の侵入は許されない地域ですが、このEEZは侵入される/するのは問題なくて、経済活動の優先権があるというものです。土地から約370kmまでの海なので、かなり広めです。私が子供のころは200海里水域と習ったような気がします。(200海里 = 約370km)

この範囲は、海底資源の開発も漁業も、その国だけが行うことが出来ます

つまり、新しい島が出来たり、島が拡大されると、このEEZも広がっていくことになるので、この小笠原諸島などに新しい陸地が拡大されることは、自国の資源が増えていくことに直結していて、非常に重要です。

西之島は隆起ではなく溶岩流で拡大中


硫黄島と同じように、拡大を続ける島として有名な「西之島」についても少し触れておきましょう。

こちらは、硫黄島の隆起のような形ではなく、ド派手な噴火を度々起こし、溶岩流で陸地がどんどん拡大していっています。(画像は2015年にNASAの衛星画像)


紛らわしいですが、「西ノ島」とは別の島です。
西ノ島は、小笠原諸島の太平洋とは反対で、日本海側、島根県隠岐諸島の島です。
西之島は、小笠原諸島の島で、火山活動で拡大していっている無人島です。

最近では、2021年8月にも人工衛星から噴煙が確認されています。

2021年は科学も発展し、IT時代の恩恵も受け、家にいながら西之島のドローン映像をYoutubeで確認することができるという、なんとも素晴らしい環境にあります。

2021年7月に行われた生物調査が行われ、環境省が動画を公開したものがYoutubeで観ることができますので、その動画をここに掲載しておきます。(ANNnewsCH様の動画)


まとめ - 実は広い日本 -


今回は、歴史や特に近代戦争史に興味がある人なら誰でも聞いたことがあるような「硫黄島」が、現代ではその隆起拡大によって産業・経済、そして資源問題についてなどに重要な役割を持つようになっているという、非常に興味深い題材を記事にしてみました。

日本は陸地面積は比較的小さな島国ですが、EEZを含めると、範囲はかなり広くなります。硫黄島や西之島の拡大は、日本国民全体が幸せになる素晴らしいニュースです。
(下の画像は2021年現在、海上保安庁が公開しているものです)


ですが、その一方でプレートや地殻がどんな状態なのかとか、日本列島に対する影響はどうなのかとか、本当に気になります。ここ300年間噴火していない富士山も心配ですし、南海トラフとかも怖いです。元々火山やプレートの動きが活発なエリアにある日本は、耐震構造などで大きな技術革新をしてきましたが、自然の圧倒的な力を目の当たりにすると、人が如何に無力な存在か思い知らされるように感じます。


EEZ関連では、南鳥島のレアアースは現在注目されていますね。このレアアースが活用できるようになれば、世界の経済バランスが変化するかもしれず、私も開発関係者の方々を応援しております。



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