「世論調査」は時代遅れ過ぎるでしょう
執筆時点は2021年9月で、世の中は自民党総裁選挙の話題で盛り上がっています。どの候補が次の総裁になるのかと、多くの人が注目しています。
そんな中、各種報道やメディアなんかで目にする「世論調査」。ネットの情報や肌で感じる人気と懸け離れているように感じたことはないでしょうか。そもそも、この「世論調査」がどういった形で行われていて、何故ネットの評判とズレが生じているのかを紐解いていってみます。
「世論調査」とは
そもそもの「世論」というのは、世間一般の意見の意味で使用される言葉で、「世論調査」というのは、その意見がどういう状態になるのか、その「動向を明らかにする」ために行われるものです。
今回の総裁選についてだと、投開票が実際に行われるよりも前に、各候補者について世の中の人がどの候補者が相応しいと思っているか、といった一般の意見の動向を調べているわけです。
実際にこの結果をもって総裁が決まるわけでもありませんし、総裁選以外でも、「動向を明らかにする」という目的以上の効果はありません。ただ、一般の意見を踏まえた上で、その決定をどのようにするのかといった影響は少なからず与えることはあるでしょう。大多数が反対していることを選択すると、その人たちの支持を得られなくなるからです。
世論調査の対象
世論調査は、統計学的な手法を用いられ、無作為に選ばれた必要十分なサンプル(標本)を対象に行います。これは統計学上でいうところの標本調査にあたります。国民全員に対して行うと膨大なコストがかかってしまうためです。
逆に言うと、この対象の選択が正しく行われていない場合、それは「世論調査」にはなりません。
日本の場合、世論調査の対象人数は統計学上では2000人程度で十分とされています。場合によってはこれ以上の人数を調査する場合もあり、人数が多いほど統計的な誤差が少なくなります。実施する内容や、実施する機関(政府や報道機関等)によっても異なります。
世論調査の形態
「内閣府」の世論調査では、「調査員の訪問」または「調査票の郵送」で行われるそうです。
朝日新聞などでは、無作為に抽出した固定電話または携帯電話に電話をした後、年齢や家族構成などの問い合わせを行い、対象者を決定するという仕組みのようです。電話番号は、電話帳などではなく、数字の組み合わせからの生成らしく、登録などしていなくてもかかってくる可能性はあります。
固定電話の契約数については、携帯電話やIP電話の普及に伴う形で年々減少しています。そのため、2017年から固定電話だけでなく、携帯電話も対象とするようになった経緯があり、現在行われるようになったこの両方の電話を対象にする方式を「デュアルフレーム調査」といいます。
ただし、特定の地域を対象とした調査の場合、携帯電話では所在地が絞り込めないため、現在も固定電話だけを対象として調査が行われています。
インターネットの活用は現状困難
もう既に違和感を覚えた方々も多いかと思いますが、今この記事を読んでいる方は日ごろからインターネットで情報を得ていて、インターネットで情報を発信していることでしょう。
ですが、「世論調査」はその情報の中枢であるインターネットは活用されていません。
これは、最初に述べた「世論調査の対象」が問題となっていて、無作為抽出が行えないインターネットでは、統計上の有効とされる結果を得ることが出来ないためです。
ただし、「世論調査」としては使用できませんが、インターネットのユーザーたちの意見を集めた「インターネット調査」というのは、現在の活用方法を様々検討されているようです。
世論調査が電話を対象とする理由
ここまでの内容をまとめると、調査対象を統計学上意味のあるものに絞れないため、現段階ではインターネットを活用できない。なので、従来通りの電話や訪問によって行われているというのが現状です。
世の中はIT時代なのに
国民全員の意見を聞くことが出来るくらいインターネットが普及されたりしない限り、現状の統計学理論の上では、昔ながらの方式を取るしかないということです。
そのため、電話に出て世論調査に回答した人が、インターネットを使用していない人が多かったりした場合は、ネット情報との大きな乖離が発生する、ということになります。こればかりは統計上の標本誤差なので仕方のないことでしょう。
最近では、日本人は紙媒体をまだ使用しているとか、紙幣や硬貨の文化がなくならないと、諸外国からバカにされることも多く見受けられます。よく言えば昔の風習を大事にしている、悪く言えば新しいものを毛嫌いする傾向にあるようにも思います。私自身は統計学の専門家でもないですが、何かインターネットという新しいインフラを活用した良い方法が見つかることに期待しています。
総裁選 - 世論調査の違和感
私が記事を書くことに決めた、違和感を感じた動画についてもここで語っておきます。同じように違和感を感じた方もコメント欄に散見されます。以下の違和感の元になった動画は「テレ東Biz」チャンネルの動画です。出馬会見が終わった後で、世論調査を実施した結果を報道している形です。
世論調査結果
上記動画の結果は以下の通りです。
1位 : 河野行革担当大臣 (27%)
2位 : 石破元幹事長 (17%)
3位 : 岸田前政調会長 (14%)
4位 : 高市前総務大臣 (7%)
5位 : 野田幹事長代行 (2%)
違和感の根源
違和感の元は、出馬会見の動画についてです。今度はチャンネル変わって申し訳ないのですが、FNNプライムオンラインでノーカットの出馬会見動画が公開されています。上記、河野さんと高市さんを比べると以下の再生数となっています。
【LIVE】河野氏 出馬表明会見 自民党総裁選 - 再生回数 18万回
【LIVE】高市早苗前総務相 自民党総裁選出馬会見 - 再生回数 140万回
動画の公開日に2日ほど差があり、高市さんの方が有利な条件での比較ではありますが、再生回数の伸びがそもそも違っていて、後2日待っても、河野さんの動画は140万回には遠く及ばないでしょう。
私自身、河野さんは好きですが、出馬表明を見る限りでは高市さんを支持しています。再生回数が示す通り、会見内容に大きな差があるためです。どちらがネットユーザーの興味を引いているかは明らかです。
結果からみると、この出馬会見と世論調査は同期していません。世間には重要な要素として認識されていないと見るべきでしょう。つまり、会見前後で世論調査には影響なし、ということです。この会見内容がすべてではありませんが、同様に世論調査が全てでもありません。
でもこの行き場のない違和感は解消される見込みもなく、それが一番絶望的に感じます。
最後に取り上げた会見動画を張っておきます。
まとめ
今回は「世論調査」についてまとめてみました。
インターネットで日々大量の情報を収集する関係で、偏向報道と感じたり、人々の声と違うと感じる世論調査だったり、色々なことが気になる今日この頃です。
調査結果の数字の元が、どういったものであるかを理解したうえで活用しているのであれば安心なのですが、現状の方法が最善で絶対間違いないと考える人がいると危険な仕組みだと感じました。特に、日本の今後を考える上での重要な「世論」という点については慎重に判断する必要があるでしょう。
国民の無作為抽出について、マイナンバーとかせっかく作ったものを活用できればいいのにと素人考えでは思ってしまいます。
マイナンバーに関連した国民のメールアドレス配布、インターネット上での世論調査登録フォームなどがあれば、調査配信ボタン一発で調査依頼のメール発射~集計結果まで出せる気もします。調査員の仕事は全部なくなりますし、セキュリティー関連で考えることが山積みで、実現は簡単ではないですが、よりリアルな「世論」を素早く聞き取ることができる仕組みはあっても良さそうに感じます。
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