2021年10月12日火曜日

世界に広がる停電問題からエネルギーを考える

ドイツや中国では停電が大きな問題に


今回は、2021年現在の様々な動きの中で、「エネルギー」の問題について現状を踏まえて色々と考えていきたいと思います。

そもそも、私たち日本人は、「電気があるのが当たり前」の生活を営んでいます。しかし、世界の国の中には、同じように電気は普段の生活に当然あるものだったにもかかわらず、今年に入って電気が満足に供給されないといった事態になっている国があります。


今回はそんなニュースを見ていきながら、私たち日本は大丈夫なのかという問題についても考えていきたいと思います。


中国の停電 - オーストラリアとの石炭問題も


まずは中国のニュースから見ていきます。

中国は、2021年現在電力不足に悩まされていて、計画停電などの措置をとって、不足した電力への対策としています。主に中国東北部での電力不足が顕著のようです。以下のニュースは2021年10月12日のものです。


このニュースによると、大雨被害によって、国内の炭鉱が操業停止となり、石炭の価格が高騰する傾向にあるとされています。石炭と言えば、オーストラリアとの外交問題により、石炭の輸入制限をかけるという禁輸措置を取っていることも知られています。

中国では、70%が火力発電に頼っている状況ですが、EV車の導入を急いだり、電子決済への移行が殆ど完了していたりと、電気がある前提の政策が先んじて導入されて行っています。そのため、この電力不足の問題は、中国に住む人々の生活基盤に大きな影響を与えることが予想されます。

この電力不足問題の解消の一環として、ヨーロッパなどから天然ガスの輸入量を大幅に引き上げるなどを行っているそうです。

ドイツの停電 - 天然ガスの高騰と消費量増加


お次はドイツのニュースです。


脱原発を進め、世界各国から絶賛されていたドイツですが、現在大転電の危機にあるという状況が報道され、多くの人たちを驚かせました。

この背景には、天然ガスの高騰が挙げられています。英国の天然ガス価格が、今年の初めから約2.5倍になっていて、2021年8月だけを見ても、1か月で70%もの価格高騰が見られるとされています。


この背景には複合的な要因があるとしながらも、上述の中国などアジア各国が天然ガスの輸入量/消費量を増大していることが一つの要因であるとしています。

つまり、中国が大量に電気を必要として、それをヨーロッパの天然ガスに頼った結果、今度はヨーロッパ側の天然ガスが足りなくなって、ドイツが停電の危機と、巡り巡って皆がエネルギー不足に悩み始めているという状況のようです。

地球温暖化対策としての脱炭素 - エネルギー政策


この大きな背景としては、現在世界各国が推し進めている地球環境問題への対応策としての「脱炭素」が考えられます。

「脱炭素」というのは、石炭や石油などの化石燃料の使用に伴う温室効果ガス排出を抑える考え方のため、各国での火力発電所の燃料を、石炭から天然ガスなどに置き換えるという動きを加速させています。

そのため、中国では石炭の高騰や不足があるものの、世界的な脱炭素の観点から言うと、それは正道でもあると言えるでしょう。つまり、そのまま石炭使用から完全に天然ガスなどの化石燃料以外の発電方法に移行できれば、同時に脱炭素も達成できるという流れです。

しかし、世界中の天然ガス資源は、現在の世界全体のエネルギーを賄えるのでしょうか

この消費についての問題を考えると、いつもホセ・ムヒカ氏のスピーチを思い出してしまいます。消費社会そのものが原因であり、環境問題は政治の問題であると断言した彼の発言の中に、今回のエネルギー問題の様な例で、車の話が合ったことは記憶に残っています。


一部先進国が行っているのと同様の消費を、他の途上国など全てが行う資源が地球上に残されているのか、というのです。例としては、「ドイツ人が持つように、インド人も同様に車を持つ社会が可能なのか」と説いています。

エネルギーについても同じだと感じるのです。今回は中国の不足分をヨーロッパが補ったら今度はヨーロッパが不足している。つまり、その他の国も同じように進めると、もっともっと足りなくなるということです。世界の裕福な国が行っている普通の生活を、世界中に広めてしまうと、地球上の資源は足りないのでしょう。

石炭で発電してEV車を動かす矛盾


そもそも中国の進め方にも疑問があります。

中国ではEV車(電気自動車)への移行が強力に推し進められているわけですが、この電気自動車を動かすための電力が石炭発電に頼っているという状況なのです。確かに、車から排出される二酸化炭素が減るのであれば、脱炭素に貢献していそうですが、代わりに石炭を燃やして火力発電所からの温室効果ガスが増加するのであれば、何の意味もないでしょう。


今回は中国で停電が起こったために、世界的に注目されることとなっていますが、この問題については、私たち日本人も良く考えなくてはなりません。

2050年には日本も電気自動車への移行を完了する予定を発表していて、その際に石炭(火力)発電所が残っている状態であれば、中国とまったく同じことになるのです。

つまり、今回のこの中国の事例を笑ったり、馬鹿にするのは間違いで、我々はそうならないようにもっと真剣に考えるべきでしょう。ただ単純に、電気自動車へ移行すればよい、という問題ではなく、同時にエネルギーの問題についても解決しなければ、私たちの日本も同じことを繰り返すことになる、そしてそれは今回の中国の件以上に恥ずかしいことでしょう。

原子力発電所はやはり必要か


この脱原発論については、個人的に色々と考えることもあって、別途記事にしてまとめたいと思っているほどですが、今回はエネルギー問題について簡単にまとめてみようと思います。

日本は、3.11東日本大震災という未曽有の災害に見舞われ、同時に発生した福島第一原発の事故の被害から、原子力発電所への恐怖心などが全国民に植え付けられました。

そのため、日本の国民や政治家の中に、「脱原発」という強い意見や意思を持った人が多くいます。

しかし、脱原発を進めるためには、このエネルギー問題についての解決が必須です。さらに、世界的に推し進めている脱炭素によって、火力発電所についても見直しが必要な状況で、当時よりも一層脱原発については推し進めるのが難しい状況にあります。

過去にも紹介した動画ではありますが、日本の脱原発についての討論として橋下徹氏と小泉進次郎元環境大臣の討論の様子について、以下に再度紹介しておきます。


残念ながら小泉進次郎氏の答弁(討論)には、相変わらず具体的な内容が含まれておらず、この動画からは、日本政府の具体的な方針を知ることはできません。しかし、2030年度という近い将来に、温室効果ガスを46%提言すると明言してしまっています。本当にどうするのでしょうか。

少し話は逸れてしまいますが、上記動画を紹介したのは小泉進次郎氏のレジ袋有料化についての記事になります。


まとめ - 期待するのは再生可能エネルギーだが - 


今回のテーマであるエネルギーの問題については、既に世界中にその対策の難しさが実生活を脅かす現象として顕著に表れ始めていることが分かり、とても恐ろしい状況です。

日本も他人事ではありません。

エネルギー問題の方策を誤れば、同じように電力不足となり、計画停電などといった場当たり的対応に陥る事だって十分考えられます。そうならないように、今後の政府や各党の主張などのエネルギーに対する考え方もしっかり把握し、近く行われる衆議院の総選挙などで適した候補者/政党を選出していく必要があるでしょう。

現在注目されているのは、脱原発以上に再生可能エネルギーの導入と活用についてではないでしょうか。エネオスが再生可能エネルギーの大手であるジャパン・リニューアブル・エナジーをおよそ2,000億円で買収したことが、2021年10月12日に報道されています。


エネルギーが不十分な状況になってしまうと、こうして情報を発信することもままならない世の中になるということなので、私たち情報社会に生きる人間にとっては死活問題でもあります。

原子力を推し進めるのが正しいとは言いません。日本だけでなく、過去ウクライナで発生したチェルノブイリ原発事故については、今もなお放射能問題に悩まされています。当時のソ連という国家は崩壊にまでつながってしまいました。


しかし、原子力発電所のエネルギーについては、もう少し研究を重ねていくべきなのではないでしょうか。脱原発を進め、エネルギー不足になったために、改めて原子力の導入を検討するという羽目になったドイツの政策から、私たちは何を学ぶべきなのでしょうか


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