2021年7月25日日曜日

経営的視点が分かると一層楽しめる - シンドラーのリスト

event_note7月 25, 2021 editBy Fluffy Knowledge forumNo comments

シンドラーのリスト - 経営者が救世主へ


最近、「シンドラーのリスト」という映画を観ました。

この映画、大学生のころだったかちょっと正確な時期は忘れましたが、過去に視聴したことがありました。なので、初見ではありません。

どんな内容だったか殆ど覚えていませんでしたが、第二次世界大戦時のドイツが起こした悲惨なホロコーストに関するものだったという朧気ながらの記憶だけはありました。

ナチスドイツのユダヤ人迫害の歴史を題材とした映画は多くありますが、この映画は特に多くの人に進める価値があるものと、個人的には思っています。それは戦時の悲惨さだけを描いたものではなく、その中での経済活動に対する工夫や、結果としてその工夫が人助けとなり、物語に救いがあることも要因の一つです。

シンドラーのリストという映画の概要


映画わざわざ見ていられないよという方もいらっしゃるかと思うので、簡単に概要を書いておきます。

「シンドラーのリスト」は、1994年に公開された映画で、監督はスティーブン・スピルバーグです。


(Amazonの説明から)
第二次大戦下のドイツ。実業家シンドラーは軍用ホーロー器工場の経営に乗り出し、ゲットーのユダヤ人たちを働かせた。やがて彼は、ユダヤ人たちを強制収容所送りから救うのだった。


第二次世界大戦時代の映画ですが、激しい戦闘シーンが描かれたりするいわゆる戦争映画ではなく、戦時における一人の主人公(シンドラー)とその周辺で起きるできごとを描いている、史実に基づいた映画となっています。
モノクロームの映画となっていて、当時の雰囲気が全体的に感じられ、演出なども最近のCGとかデジタル風味なものではなく、クラシックな感じで、落ち着いた感じにまとまっています。

映画「シンドラーのリスト」劇場予告 (Youtube)


戦時の経営者 - 主人公シンドラー


主人公シンドラーは、経営者です。
特殊な技術があるわけではなく、人との交渉や人脈構築に長けている、営業部長的な人間です。その彼は、戦争前に事業を起こすが失敗を繰り返していました。



しかし、戦争が進んでいくのと合わせて、当時のドイツはユダヤ人をはじめとする人種への迫害を始めており、その関係でユダヤ人は非常に雇用するのが安価な状態となっていました。シンドラーは、その人件費が異常に安いユダヤ人を雇用し、軍に需要のある金物(劇中ではホーローという)を製造し、事業に成功していきます。

劇中で、シンドラー自身が、それまで事業に成功しなかったことを振り返りながら、「足りなかったものは…戦争だ」と述べます。戦時になって、彼の能力が発揮され、軍関係者等様々な人脈構築、そして賄賂などを必要に応じて駆使して立ち回り、事業を成功させていくのです。もちろんその背景には、ユダヤの方々がどんどんひどい境遇に追い込まれて行っているということがあるわけなのですが。

若かりし頃に見たときは、このあたりのシンドラーの考え方を表面上分かっていたつもりではいましたが、実際に会社経営に関わる立場で仕事をしていた経験から、彼の魂胆・やりたい事がしっかりと理解できるようになっていました。

間違いなく彼は「金儲け」をしていたのです。

金儲けのための行動が救世主と呼ばれる


順調にお金が稼げて行っていたのに、ある時従業員のユダヤ人が軍に連行されてしまうような事件が起きてしまいます。彼は軍に交渉し、従業員を取り返します。

その時のシンドラーの考えは、「事業(金儲け)に必要な人員を勝手に連れていくな」ですが、ユダヤ人の従業員の受け取り方は違います。軍人に容赦なく迫害される時世で、ユダヤ人である自分を救ってくれた、と。

シンドラーに感謝を伝えると、そんな風に思うなと反発します。


ですが、その後別の女性から父母を助けてくれと懇願されると、自分はそんな人間じゃないと断りますが、その後軍に金銭を渡してその父母をしっかり助けたりしはじめます。徐々に金儲けだけではなく、人助けもするようになるのです。

そして、ドイツ軍によるユダヤ人の収容所への強制移住、強制労働などを目の当たりにし、そのあまりに非人道的な行動に、徐々に軍へ反発するような行動を、持ち前の器用さで行なっていきます。軍部との関係を維持しつつ、時には冗談めかしながら、時には賄賂を駆使し、ユダヤ人を救うような行動を繰り返していきます。

最終局面では涙が溢れます - 私財を全て投じて人命救助


過去に視聴した時は、記憶に残らないほどの印象しかありませんでしが、今回の再視聴では涙が止まりませんでした。

悲しかったとか怖かったとかではなく、シンドラーの思い、優しさ、悔しさへの同調ともいうような感情でしょうか。感情移入にも近いかもしれません。


ドイツ軍によるホロコーストで非常に有名な強制収容所「アウシュビッツ」が完成し、自分の従業員たちがそこへ全員移動させられることが決定されてしまいます。当然軍部に対して「自分の従業員を連れていかれては困る」と掛け合いますが、「直ぐに次が来るから諦めろ」といわれてしまいます。

彼は荷物をまとめて地元に帰ろうと準備をはじめますが、その中で従業員達のことを考え、そしてついに決心します。

莫大に稼いだお金を元手に、従業員としてユダヤ人を買い取る交渉を行います。軍との交渉で、一人いくらと決めた後、自分の持てる財産を元に、買い取る人の名前をリストアップします。そのためタイトルが「シンドラーのリスト」なのでしょう。この取引で、彼は完全に無一文となります。

それからしばらく後に終戦となり、救った多くのユダヤ人に囲まれながら、彼は後悔して泣き崩れます。救ったことに対しての後悔ではありません。移動のための車を見て、「この車を売り払ってお金にすればまだ救えた命がある」「これを売れば2人は助かったはず」「自分は全力を尽くせていない」と。

まとめ - シンドラーのリストを観る方へ


この記事を書いていたら、また観たくなってきました。
本当に素晴らしい映画でした。

勿論歴史的な資料としての意味合いでも非常に優れたものだと思いますし、映画としてのストーリー性や演出なども含め、すべてがとても優れたものだと感じます。

他の記事でも書いたかもしれませんが、日本人は第二次世界大戦については「日本が悪いことをして負けた」という歴史観のみを教育され、欧州戦線の詳しいことなどは学校では習いません。確かに学校教育で取り扱うには難しい背景もあるのでしょうが、これはとても良くないことだと感じます。正しい歴史の知識を身につけ、今後の人間社会において、間違いのないようにしなければと思うばかりです。

見る場合の注意 : 長編映画


3時間に及ぶ長編映画です。
見始めるとテンポは悪くなく、どんどん進んでいくため長さは感じませんが、終わってみると、現実世界の時間が大幅に進んでしまっていることになります。時間の余裕のある時にみるようにしましょう。

見る場合の注意 : 戦争の残酷さ


激しい戦闘シーンこそありませんが、残酷な殺害シーンや、目を覆いたくなる悲惨なシーンは多く登場します。また、戦時に露わになる人の汚さや残虐性などもリアルに表現されているため、本当の意味で「怖い」映画です。そういうのが苦手な人はご注意ください。

おまけ - コメディーでヒトラーを知る - 


ヒトラーに関する映画で、コメディータッチの映画「帰ってきたヒトラー」を紹介します。これはヒトラーが現代に蘇ったらどうなるかという、何ともブラックジョーク感が強い題材ですが、なんとドイツで製作されている映画です。


映画の内容としては、序盤はカルチャーショックで面白おかしい感じなのですが、徐々に民衆を扇動していき、民意を誘導し始めるという少し怖い展開となります。民主主義の中で独裁政治に政治体制を変え、国を率いたヒトラーという人を良く描けていて、政治への関心が薄れることへの警鐘として非常に強いメッセージを感じられる良作です。こちらも是非ご覧ください。

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