2021年7月25日日曜日

カルト宗教への信仰が覚めた男の苦悩 | 元オウム真理教の上祐史浩氏

上祐史浩氏が語るオウム真理教


世界でも有名なオウム真理教の起こした都市部での無差別テロ事件は、信じられない程悲惨で、現在の日本の人たちの多くも忘れられない出来事だったのではないでしょうか。

このオウム真理教に所属していながら、一連のテロ行為や殺人行為などには関与が認められなかったため、幹部でありながら極刑を免れた人がいます。それが今回取り上げる「上祐史浩」氏です。現在彼は当時の謝罪をしたり、様々なインタービューなどを受けるなどして、オウム真理教の実態を伝え、社会に対して償おうと必死に行動されているようです。


今回の記事では、上祐氏がインタビューで語るオウム真理教との出会いから、信仰が覚めて正しい道に戻ろうとする過程、そしてその道がどのように過酷なものかというものを取り上げながら、社会の在り方についても考えて行こうと思います。


上祐 史浩という人について


オウム真理教が世間を騒がしていた自体、「あぁ言えば上祐」と揶揄されるほど有名になったオウム真理教の幹部で、広報を担当していたこともありテレビなどのメディアに頻繁に出演されていました。質問されたことに対して色々な屁理屈を並べて煙に巻くのが本当に上手く、その饒舌さから一部で何故か人気がでるという不思議な現象が起きたのを覚えています。

オウム真理教の一連のテロ事件から一斉摘発を受け、逮捕されています。

ただし、殺人やテロ事件の関与はないとされ、私文書偽造などの罪に問われ、3年間の懲役を受けています。現在は、広島刑務所での服役を終え出所しています。

幹部でありながら、集団で殺人をおこなっていたにも関わらず、それに関与がなかったとは、なかなか信じるのが難しいところですが、日本の司法が決めたことなので、恐らく本当に関与がなかったのでしょう。

オウム真理教の前は、なんとJAXA(日本の宇宙開発総本山)の社員でもあるという不思議な経歴を持つ人です。元々、そういう超科学的なものには興味があったそうです。ムーという超常雑誌でオウム真理教のことを知って、オウム真理教が運営するヨガの教室に通うところから接点を持ち始めます。


出所後は、オウム真理教を改めAleph(アレフ)としその代表となりますが、元教団教祖の麻原正晃の親族との考え方の違いから、別々の道を歩むことを決め、現在は「ひかりの輪」を設立しています。

外部の人間は真相を知ることが難しいですが、上祐氏が言うには、アレフは麻原正晃の崇拝を継続していて、ひかりの輪は仏教に近い考え方を教える教室として活動しているそうです。

海外でも有名なオウム真理教 (5大カルト宗教)


私自身は歴史やそれに関わる宗教を学ぶのが好きなので、色々そういった系統のYoutube動画を視聴します。

ある日、Youtubeのオススメに出てきた海外のカルト宗教ランキングのような動画を視聴していたところ、突然日本の元オウム真理教が語られ始め、日本の報道などに英語のテロップがでながら詳しく紹介されていました。

オウム真理教の事件は、日本では非常に有名ですが、宗教活動が盛んな海外でも話題になるほど、世界的に見ても規模が大きく悲惨な事件であったのだと思い知らされました。



オウム真理教に関連した主な事件


オウム真理教は宗教団体ですが、非常に多くの事件を起こし、日本の報道番組でも頻繁に取り上げられていました。最近でも後継団体のアレフに対して立ち入り捜査をするなどがニュースになっていたりします。

ちなみにオウム真理教は仏教系の宗教で、日本で宗教法人として申請する際には、チベット仏教とも交流を深めていました。1億円を超える多額の献金をして、チベット宗教の頂点に位置するダライ・ラマ14世から推薦状を得ています。

チベット仏教については別途中国との問題もあり、別の記事でオウム真理教についても触れていますので、興味がある方は以下の記事もご覧ください。


オウム真理教が引き起こした主な事件について、以下にまとめてみることにします。

地下鉄サリン事件 (1995年)


様々な問題を引き起こしたオウム真理教ですが、最も有名なのは地下鉄サリン事件です。

地下鉄サリン事件は、1995年に東京都の中心部で起きた、同時多発テロ事件です。大都市圏で神経ガスであるサリンを使用したテロ事件は世界的にも稀で、非常に話題となりました。都内で生活をしている多くの方が被害にあわれ、乗務員や係員、それに救助に当たられた方までもがサリンを吸引して呼吸困難な状況になったりと悲惨な状況で、連日テレビ等の報道もこの事ばかりを伝えていた印象があります。

当時の警察無線を地図と照らし合わせてまとめた動画が作成されていて、その動画では不穏な状況が徐々に緊迫した状況になっていく当時の空気感が見事に表れており、同時に地理的な状況もよく分かるので、ここで紹介しておきます。



坂本弁護士一家殺害事件


その他にも、坂本弁護士一家全員が殺害される事件も有名です。

この件は、失踪した坂本弁護士の自宅にオウム真理教に関連した物品が落ちていたことから、当初より関与を疑われていたため、テレビ等の報道番組でも、オウム真理教関係者が度々関与に関する質問をされていたことが印象的です。

それらに答えていた上祐氏は関与を知らされていないため、本当に身の潔白を証明するために必死だった、ということのようです。知らないからこそ、あそこまで迫真に迫った無実の弁がたったということなのでしょう。


テレビ生中継中に発生した村井秀夫刺殺事件


怖いのが、実行犯の一人としてこれら事件の情報を多く持っていた村井氏が、テレビの生中継の最中に刺されるという事件が起きたことです。報道陣が詰め寄る中で、急に刺されて動かなくなるその一部始終が、日本全国のお茶の間に届けられるという、凄まじい事件です。


この事件のせいで、村井氏から貴重な情報を得る機会を失ってしまいますが、各事件に関与したとされるオウム真理教関係者、麻原正晃を含む20名近くが逮捕され、死刑や無期懲役などの実刑判決を受けています。麻原正晃は既に死刑が執行されており、この世にはいません。


死刑執行時のニュース動画も紹介しておきます。
本動画の中でも、上祐氏はインタビューに回答されています。死刑が執行された実行犯たちの犯行や、「ポア」と言われる殺人を肯定する考え方についても紹介されていて、よく纏まった動画になっています。

オウム真理教の内部事情から心理変化などを知る


上祐氏のインタビュー動画を紹介します。

私自身は、教祖として有名だった麻原 彰晃こと松本 智津夫が死刑執行されていることは知っていましたが、その後のこの宗教団体の活動などはまったく知りませんでした。

アレフという団体とは別に活動をしている上祐氏の現在の状況などと共に、事件当時の彼の行動原理、それに新興宗教に惹かれていく人の過程などが語られています。

結構な長編で、前・後編に分かれています。





非常に興味深く拝見させていただきました。

この動画の中で、人がどのようにカルト宗教に魅入られていくのかという実体験も語られていて、その心理状態の変化は、正常な人が聴いていても少し怖くなるものでした。

また、あんな騒動が起こった後に、それでも麻原正晃を崇めて崇拝する人々が少なからずいることも驚きです。それほどまでにカリスマがあったということなのでしょう。

動画内で、上祐氏は服役中に色々と考えをまとめ、出所してから麻原正晃の間違いを正してやり直そうと決心し、出所したようなことを述べ、それを実行していくことになったようです。

更生に立ちはだかる「失敗した人を許さない社会」の壁


インタビュー全編通して興味深かったのですが、特にオウム真理教に関わらず考えさせられたのが「失敗した人を許さない社会」についてです。


失敗した人を許さない、受け入れない、更生を信じないという風潮は、社会全体そして私自身もそういう考えであると気づきました。日本の教育の影響なのか、集団的な倫理観に基づく者なのかもしれません。

事件に関与してないとされていても、「いやそうは言っても…」と訝しみ、穿った目でしか見ることができない自分がいます。

実はその他の日本国内の近現代の事件なども興味があって調べたりすることがありますが、似たような事象(加害者家族への差別など)があることも知りました。

そういった絶望的な状況に置かれた状況で、どのように生きていくのかということを、上祐氏の教室ではお話しされているとのことです。

厳しい社会の中で生きる方針を示す「ひかりの輪」


申し訳ないことに、上祐氏のインタビューの中でも、彼の活動(ひかりの輪)は宗教ではなく教室とされていますが、やっぱり私には宗教と感じてしまいました。

日本国内では「宗教」というと、不要な波が立つことも分かりますが、個人的には「宗教」は悪いものだとは思っていませんし、教養の面からも日本人は恐れずもっと学ぶべき分野と思っています。(傾倒するとか信仰するとかではなく、学び理解する)

考え方を学ぶことで救われることや救われる人がいることも確かでしょう。


病、老、死という問題に対して、どうしたらいいかと思い悩んでいたが、それを不可避なものとして受け入れたお釈迦様の悟りのように、社会に受け入れられない絶望した状況から脱出するのではなくその中で生きていく考え方を説かれている、と取ると、やはり宗教なのかなと思った次第です。これは素晴らしいことだと思っています。

個人的には批判しているわけでも否定しているわけでもないのですが、やはり少し警戒してしまいます。人を安易に信じては危険という「防衛本能」がどうしても働いてしまうようです。失った信頼を取り戻すのは、どんな場合でもとても大変なことなのだと改めて感じます。

まとめ - 正しい情報を取捨選択し考えることが重要 -


私自身、学ぶのは好きですが、自身が宗教に染まるとかそういうつもりは全くなく、ただの知的好奇心から調べたりしています。裕福な日本人として生まれ育った私は「宗教に救いを求める」という感覚が、今一つピンと来ない感じです。

そんな中、今回観たインタビューはとても良くまとまっていて、とても勉強になりました。こんな良質なコンテンツが無料で閲覧できる時代にも改めて感謝です。

メディアの一部報道だけで分かったつもりになって思考停止し、飽きて忘れる。

これはとても怖いことで、物事の本質を見極めるには、自分から情報を集め、正しいものを見極め・取捨選択することが大事だと痛感する日々です。

新興宗教として有名な「エホバの証人」についても、色々調べて記事にしているものがあります。こちらは宗教二世における様々な問題が浮き彫りとなっていて、違う意味で色々と考えさせられる内容となっています。



最後に、地下鉄サリン事件から25年経過してからのその後として、後継教団であるアレフへの立ち入り調査や、事件被害者のご遺族の方のお話をまとめた報道番組の動画を掲載しておきます。事件から時間が経過し、事件そのものを知らない信者や、新型コロナウイルスの蔓延に伴う終末思想的な扇動や洗脳の危険性についても言及されています。


アレフという団体は、日本で死刑となった犯罪者を今も教祖として崇めており、そこに入信している信者の方々は、そのことをどのように受け止めているのか、その心理状態には興味すら湧いてきます。

人を救済するために犯罪を犯す、人を殺めるなどをするような思想を持った団体は、断じて許されるべきではなく、こういった団体を強制的に解散させるなどの権限が、国家権力には必要なのではないでしょうか。ただ、解散させると潜ってしまうので、あえて活動させて見える状態にさせておくという戦略もあるようで、事はそう単純ではないようです。


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