連日のように報道されるCOP26のデモ
2021年11月現在、イギリスでCOP26が開催されていることもあり、気候変動に関するニュースなどをよく目にします。
世界の首脳達が知恵を絞ってこの困難な課題に挑戦しているところですが、そんな中で一般市民、特に若い世代を中心に、この世界各国の首脳達に対する不満をデモという形で表している人々を伝える報道を多く目にします。
COP26の会場に留まらず、日本国内でも同じような石炭火力発電所からの脱却を訴えるデモが行われたりもしているようです。
彼らの言い分としては、世界の首脳達は話し合いばかりで行動しない、もう話し合いはいいから行動しろ、ということのようで、この遅々として進まない気候変動問題への対応に対する苛立ちと焦りが感じられます。
今回は彼らの行うデモについて、特に私たち大人や特に日本が取るべき行動について考えてみることにします。
行動しない権力者たちへの苛立ち
この気候変動という問題は、かなり前から盛んに各国間で話し合いが行われてきています。
COPというのは、気候変動に関する国際連合の枠組み条約のことで、第3回にあたるCOP3で私たち日本から京都議定書というものが1993年に提出されていて、その後2015年のCOP21にてパリ協定で同意した内容に沿って、今も協議が続けられています。
COP自体が採択されたのは1992年のことで、2021年からするともう30年近く前のことになります。
30年というと長い歴史の中では一瞬の事かもしれませんが、一人の子供が30代の一人前の社会人に育つと考えると、とてつもなく長い期間にも思えます。
その間、どんどん科学は発展し、スマートフォンを手にした私たちは一層便利になった世の中をさらに良くしようとしながら、日々生活をしています。
気候変動に関しても話し合いは続けられますが、それは人々の営みの中にある諸問題の一つで、最優先ではないのです。
しかし、30年の間に世界の各地では温暖化の影響で様々な変化が起きてきており、その変化を止めなければ人々の生活に支障が出ることが予想されているため、特に若者の間で将来を危ぶむ声が高まっています。
諸問題の一つで後回しにするのではなく、急いで対応する必要がある事だと気づくべきだと主張しているのです。
現社会の維持も必要で、行動は容易ではない
気候変動への対応が必要なことは、COPが採択されていることからも分かる通り、殆ど世界中の国の首脳達は理解しているのです。
しかし、それぞれの国には内政の事情などもあり、それらとバランスを取りながら進めなければならず、単純には進められないのです。
デモの中にはそういったことを理解せず暴論を振りかざす人もいるでしょうが、デモを批判する人たちについても、彼らがそういう事を考えてないと頭ごなしに否定することは慎むべきでしょう。私たちだって彼らのことを何も知らないのです。
デモの意図としては、具体策を提供して改善を進めさせることではなく、気候変動に対して関心を強く持っている人々がこれだけいるのだぞと主張することでしょう。
内政の諸問題よりも優先度を下げている場合ではないのだ、と叫んでいるのです。
日本のエネルギー問題についても、COP26では石炭火力発電所を廃止する方向で決議が進みましたが、日本やアメリカはその案に賛同できませんでした。日本の火力発電所は2021年現在30%程度を占めており、それを削減することに必死で、廃止できるのは先の話です。
思ったからすぐに実行できるというものでもなく、移行のための準備などもあり、その期間は数日ではなく数年かかるものもあるでしょう。今回の対策は一時的なものではなく、恒久的なものとする必要もあるのです。
「やらない善よりやる偽善」 - デモ隊に対する批判に想う
しかし、デモ隊に対する批判は非常に多く目につきます。
デモ隊を報道するYoutubeの動画のコメント欄などには、何も考えていないとか暇なのだろうといった、批判と言っていいのか分からないレベルの中傷的なものも散見されます。
そういうコメントを見ると、「やらない善よりやる偽善」という言葉を思い出します。
この言葉は、元々は広島の原爆の子の像の折り鶴がいたずらで燃やされてしまった際に、ネット民が集まって折り鶴をもう一度作って届けようという行動を起こした際に、今回のデモへと同じように批判的な言動がみられ、誰かがその批判に対して発した言葉が基になっています。
ぐちぐち口ばっかり達者で行動を伴わない「善」のつもりの人より、結果はともかく行動する「偽善」の方がよっぽどマシだというのです。
この言葉は時と場合によっては不快でもありますが、世の中には同じような口だけは達者で実を伴わない人も多く、共感できるところも多大にあります。
そしてこの言葉はそのまま日本政府に対しても同じように感じます。
御託はいいからさっさと行け、ということです。
岸田総理には行動を求められる
日本の政治は衆議院総選挙も終わったばかりで、まだ混沌とした情勢ではありますが、新しく自民党総裁、そして内閣総理大臣になった岸田文雄氏には、気候変動についても行動を求められます。
強行軍でCOP26へ参加して日本の声明を発表したことは非常に好感度が高いですが、日本の政策は以前からの引継ぎものばかりでしょう。岸田総理ならではの地道で人の意見をくみ上げた政治を執り行っていって欲しいものです。
既に世界に発表してしまっている温室効果ガスの排出量低減の目標や、ガソリン車の販売禁止措置など、2030年前後に多くの区切りが設けられているのです。
取り返しがつくことならやってみようじゃないか
正直デモ隊たちの不満からも分かるように、私たち日本は特に「何もしていない」とみられているのです。
実際には、エネルギー問題の解決のために再生可能エネルギーの準備や、EV用の充電スタンドの誘致など、色々と進められているのですが、それらは一般の国民にとっては分かりづらく、そして即効性があるものでもないのです。
時間がかかるものばかりでは人々の不満も高まる一方で、直ぐに効果があるものも並行して進めることで、この不満を解消しつつ、そしてその中でも研究を重ねてよりよい方策を検討することも必要なのではないでしょうか。こういう判断はリーダーの資質が問われるところだと思います。
製造業の場合にも、最終成果物の品質の担保だけでなく、その経過で良好な関係作りを行うような進め方も、後の取引を継続させる秘訣だと思いますが、それと同じことだと思うのです。
問題の中国はエネルギー政策で計画停電も実施
エネルギー問題を抱える中国では停電が起こっていることは有名です。同様に天然ガス高騰でドイツなども大停電の危機に瀕することになったりもしており、世界的にエネルギーに対する移行の混乱は始まっています。
中国の停電については、特に北部においては気候的に寒さが厳しい秋冬の季節に停電となると死活問題でもあり、国民の生活を危険に追いやる中国政府は本当に非人道的だと思う感情もあります。
しかし、この計画停電について、少なくともインタビューに答えているような一部の中国人はこの政策に協力しなければという意思をもっていることも確かです。今の生活の充実よりも、世界的な気候変動への動きに協力をしなければという気持ちなのか、中国政府に逆らえないという気持ちなのかは判断できませんが、少なくとも人々の生活が犠牲になっているのです。
それに対して私たちはどうでしょうか。
今の生活を変えてまで気候変動への対策を行いたいと思っている人は少数派なのではないでしょうか。ヨーロッパ諸国や中国などが必死で進めているのを横目に、これまでと同じ生活をしている日本の状態を知れば、デモ隊の主張も理解できるのではないでしょうか。
レジ袋有料化は失敗だとは思うが「そういうこと」ではないか
前政権の時の小泉元環境大臣が行った政策の一つで、「レジ袋有料化」があります。
コンビニやスーパーなどのビニール袋が有料化され、マイバックなどを推奨するという政策です。大きな目標としては、一般市民への意識改革です。
この政策は、一般市民からは面倒だと言われ、店舗からは盗難被害が3~4倍になったと悲痛な叫びが聞こえてきています。
正直この政策は失敗と言ってしまってよいでしょう。だからと言ってすぐに無料に戻す決断をするのではなく、この結果を元に議論を進め、法整備を進めるなども十分視野に入れるべきだと感じます。
しかし、たとえ失敗だったとしても、この失敗は取り返せます。
つまり、気候変動や環境問題に対する取り組みで必要なのは、こういう「出来ることをやってみる」ことなのだと思うのです。結果が悪ければ改善をまた考えればよいだけです。
資本主義だからこそ出来ることがある
私は、基本的には資本主義だからこそ気候変動への対策や温暖化対策が進まないと思っている人間です。資本主義思想では、利益の追求が根本にあり、気候変動の対策は利益を生み出さないため、この経済思想の上では非合理極まりないのです。
しかし、この資本主義社会を支える政府だからこそ出来ることもあると思うのです。
分かりやすいところで例を挙げると、「税金」を引き上げることで消費をコントロールすることでしょう。上記レジ袋も類似した手法だといえるでしょう。
エネルギー問題の解決に「電気に税金を課す」とか、温室効果ガスを生み出す牛のゲップに対して牛肉価格を上昇するように舵を切るなどです。ガソリンについても高騰が続いている中ではありますが、さらに税金を課すなどをすると、その他の物価まで高騰してしまいそうですが、一考する価値はあるでしょう。
そして、調整して一時しのぎにするのではなく、それは恒久的な「新しい社会構造」を作ることが狙いでなければなりません。
2030年にガソリン車が販売禁止になっても、変わらずガソリン車は走り続け、温室効果ガスもその時点では変わりません。効果が出るのはもっと先でしょう。これから10年間でどれだけの気候変動が起こるか予想もできませんが、起きてからでは遅いのです。
後何人が気候変動に伴う異常気象で犠牲になれば、本気で対策を取る気なのでしょうか。そういう事だと思います。
後何人が気候変動に伴う異常気象で犠牲になれば、本気で対策を取る気なのでしょうか。そういう事だと思います。
まとめ - no more blah blah blah -
グレタ・トゥーンベリ氏の発言は過激で稚拙でもあり、正直心から賛同することは難しいのですが、それでも言いたいことは分かります。
No more Blah Blah Blah(御託はもういい)と、COP26周辺で行われるデモで発言したことが広まり、多くのデモ活動でこの言葉が叫ばれるようになりました。
デモ隊の主張に折れるのではなく、長期的な施策と並行して即効性のある施策も取ることで、人々の意識も高まり、より広い知識層からの有効なアイデアも出てくるような社会にもなるのではないでしょうか。
最後にテレ東Bizがデモ隊の日本人にインタビューをしている動画を紹介して今回の記事を締めることにします。
コメントを投稿