平和を望む一人の日本人の思い
2022年の5月も終わりを迎えようとしています。
今年(2022年)の2月24日ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始し、今もまだウクライナ国内は戦争状態で、世界は緊張に包まれています。アメリカ・イギリスといったNATO加盟国や日本も含めた西側諸国などを中心に、ウクライナへの軍事・民間に関する支援や、ロシアに対する経済制裁の強化なども継続して行われています。
今回は、そんな社会情勢の中で感じる、まったく個人的な不安や懸念を一つの記事として残しておこうと思っています。
私個人は歴史を学ぶのが好きな、一般的な日本人のつもりです。
平和のためには「仲間との協調」ではなく「敵との対話」を
最近は報道などで、「価値観を共有する仲間」との連携を強めるといった言葉を頻繁に耳にします。2022年現在、日本の内閣総理大臣である岸田総理も、アジア各国やヨーロッパ諸国を訪問し、その意図についてロシアや中国を念頭に「価値観を共有する国との連携を強める」という発言を繰り返しています。
確かに、抑止力を高めるために連携を強めて力を誇示し、軍事行動を起こす事が不利益だと思わせることは、非常に重要なことなのだと理解しています。しかしこの行為によって、敵対している国とは一層溝が深まる事には違いないでしょう。
個人的には、平和のためには仲間と仲良くするのではなく、敵対している相手とお互いに歩み寄る必要があると感じるのです。
相手と威嚇し合い、反発し合い、お互いが軍事力を強化し続けた先は、本当に平和でしょうか。お互いの信念が強いことから、折り合いを付けることを放棄してしまえば、永遠に仲違いしたままなのではないでしょうか。
そんな思いがあって、最近の西側・東側の間に構築されていく高い壁が不安で仕方がありません。
ロシア包囲網を強めた先は「窮鼠猫を噛む」
ロシアがウクライナへの軍事行動を開始してから、西側諸国を中心に経済制裁が行われるようになりました。
経済制裁の内容は徐々に強化されていっていますが、現時点では国際間の決済でしようされるSWIFTからロシアを排除し、ロシアからの原油輸入を停止するといったことが行われています。
ロシアは天然資源を豊富に持っている国で、その輸出はロシア経済を支えています。石炭・原油といった資源も重要ですが、ロシアからの天然ガスの輸出はヨーロッパの多くの国のエネルギー源にもなっています。今後戦争が長引けば、天然ガス輸入だけでなく、その他の更に強い経済制裁措置が執られるようになる可能性もあるでしょう。
長い歴史の中では、同じような経済制裁が行われており、私たち日本人はその制裁対象でもありました。少し歴史を振り返りながら考えてみます。
侵略国家は悪 - 聞く耳持たずの国際社会
世界が帝国主義とも呼ばれる植民地政策を推し進めていた時代がありました。
かつて日本も欧米列強に追いつくために必死で富国強兵を進め、その結果世界の極東にありながら、先進的な文明と強力な軍事力を持つことに成功し、その影響力は徐々に大陸へと及ぶようになりました。朝鮮半島・中国満州地方などで、清やロシアと軍事的にも衝突する事となり、結果としては日本の経済圏が広がる形となりましたが、中国で清が倒れて中華民国が建国された後、満州地方の日本の権益が脅かされるようになっていき、残念ながらまた日本は中国との戦争をすることになってしまいます。中国との戦争は日本が優勢で、首都を目指して進軍を続ける形で進められていました。
しかし、この日本と中国の戦争について、国際社会は日本に非があると決定づけました。
現代を生きる日本人は、学校教育などで「日本が侵略した」ことが悪いのだと教わります。しかし、現実はそんなに単純ではなかったはず、と私は思っています。
ロシアを擁護するわけではないし、今回の侵略行為は絶対に許されるべきものではありませんが、当時の日本とロシアの現状は非常に似た境遇にあると感じます。ロシアの言い分は聞き入れられず、一方的に悪と断定されて国際社会から追放されていっています。
日本も日本人を守るための闘いを中国でしていたはずですが、状況を説明しても理解は得られず、結果として当時の国際社会組織であった「国際連盟の脱退」という結果に繋がります。
ABCD包囲網による石油の禁輸措置
国際社会に否定された日本は、現在のロシアのような状況に陥っていきます。
アメリカやイギリスなどは、中国に対して軍事的な支援を本格化し、経済制裁も強まっていきます。支援された最新兵器をもった中国に対して、それまで優勢だった日本も苦戦するようになり、長期化する戦争に苦しみ始めます。
そして、アメリカ(A)・イギリス(B)・中国(C)・オランダ(D)の4か国による日本に対する石油の禁輸という経済制裁が決定します。
ABCD包囲網については他の記事でも取り上げたことがありますが、当時の日本の周辺やアジア全域は、ほとんど欧米諸国の植民地で、独立を保っていたのは日本とタイくらいでした。
日本は石油が入手できなくなると、戦争を継続するだけでなく、日本国民の生活まで立ち行かなくなってしまうため、何とか制裁を止めてもらえるように外交努力を積み重ねますが、残念ながら「聞く耳持たず」の外交姿勢は変えてもらえず、やむを得ない決断に追い込まれました。
経済制裁で苦しんだ日本の決断 | 太平洋戦争開戦
オランダ領インドネシアの石油を目指しながら、「諸悪の根源である欧米の植民地政策・帝国主義と徹底的に戦うしかない」と決断し、その先駆けとして太平洋にあるアメリカの軍事拠点ハワイ真珠湾への奇襲が決定しました。
自分たちの正義や防衛のために戦っているのを一方的に悪だと決めつけられて、経済制裁を科せられている国家が、改心して自分たちの非を認めるというのは一体どういう状況なのでしょうか。少なくとも当時の国際社会や、今のロシアへの制裁を行っている国家は、その可能性に賭けているようですが…
結果として自分たちの正義を貫き、相手の非を正すために立ち上がった日本は、太平洋を中心として悲惨な戦争を繰り広げることになり、多くの人たちが犠牲になりました。
日本にある有名なことわざに「窮鼠猫を噛む」というものがあります。まさに当時の日本は追い詰められたネズミで、敵わないネコに噛みつくしかなかったのです。
ロシアへの経済制裁を強めた先は…核兵器の恐怖
現在、西側諸国によってロシアへの経済制裁が強まる状況は、太平洋戦争前の日本と状況が酷似していると感じます。
大国の脱退を防ぐことに配慮された国際連合はかろうじて体裁を保っていて、ロシアも未だ常任理事国で権力を握っています。脱退対策は有効だったようですが、拒否権の存在で何も決定することができず、意味のない組織になっていると個人的には感じる日々です。
経済制裁を強めた結果、本当にロシアが立ち行かなくなってしまうと、日本が当時決断したように、ロシアも彼らの正義のために更に過激な決断をするかもしれません。
ロシアは核保有国です。国家の存続を危うくされ、やらなければやられるという状況に追い込まれた時、それを使わない選択肢があるのでしょうか。そして、核兵器を使われたり、より悲惨な戦争行為が行われた時、世界の各国はどのような行動に出るのでしょうか。
日本はロシアと国境を接した国の一つで、巻き込まれない想像をする方が難しいと思うのです。
最後にもう一度 - 経済制裁ではなく対話を
自国の防衛力の強化は必要でしょう。自国防衛について他国まかせではなく、自分の身は自分で守るという意思の元、最低限の防衛力は持つべきだと思っています。
しかし、ロシアの動きを本当に止めようと考えるのであれば、相手側の言い分を聞くのではなく、「対話」がもっと必要だと考えています。
中国などを念頭に、今後の国際秩序のために甘い対応が難しいことも理解しますが、今の国際社会の行動は、歴史から何も学ぶことなく、世界中の人に悲惨な歴史の追体験を提供しようとしているだけ、と思わずにはいられません。
自分たちの価値観が正しいと思うことは誇らしい事ですが、相手を理解する努力がなければ、それは只の我儘であり自己中心的な考えであると感じます。
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